たりたの日記
DiaryINDEX|past|will
何日か前に「千と千尋の神隠し」を見た。宮崎駿の描く女の子はいつもまっすぐで、潔く広くて強い愛を持っている。恐怖や邪悪なものに心を閉ざしていくのが人の常なのに、彼女たちはそこのところをすっと超える。恐怖の前で勇気にあふれ、邪悪なものを愛の力で癒す。私には彼女たちが永遠なるものに自分を投げ入れていくように見える。それゆえに永遠なるものの力が彼女たちに宿るような気がする。初めてナウシカという少女の中に見たひとつの原形を、千尋の中にも見る思いがした。
今度のアニメは映像は不思議だった。どの絵もいつか夢の中で見たことがあると思った。どうして私の夢の絵がこんなスクリーンの中に出てくるのだろうと思ったのだが、夢というのは誰の夢もこんな様子をしているということなのだろう。 暗いトンネル。いきなり開ける人のいない草原。廃虚。自分が人間以外の動物に変わる夢。夢の中でもらう解かなければならない課題。空を飛ぶ夢。水に溺れる夢。そういった記憶の底に残っているきれぎれな印象がストーリーとなってまた映像となって現れてくるのは何といっても楽しかった。
千尋を助けた川の魂を千尋が思い出す場面は心が震えた。川とも樹とも人間は交流することができる。川も樹もその交流を忘れてはいない。これはファンタジーだけの世界のことだろうか。私は小さいころそこを通る度に幹を撫で、心の中で話しかけていたケヤキの樹のことを思い出していた。私は今でも風や木々との交流を信じている。
わくわくする不思議な夢から覚めるように映画が終わった。 その後で聞こえてきた歌に戦慄が走る。 ぼろぼろと涙がこぼれる。この声はいったい何? その声のなかにまっすぐな魂が見える。なんという存在感だろう。 今までに聞いたことのない歌い方、声の方向だった。その時はその歌声にただ圧倒されて言葉は切れ切れにしか捕らえられなかったが「生きている不思議 死んでいく不思議」というフレーズと「ゼロになるからだ 充たされてゆけ」というフレーズが胸を突いた。
今日、この主題歌のCDを手に入れてきた。この歌を作曲し、歌っているのは 木村弓という人。シュタイナ−の思想をもとに考案された竪琴ライアーの弾き語りをしている人だということが分かる。 ここでも シュタイナ−に出会ってしまった。心惹かれるものを探してゆくと、行く先々に シュタイナ−がいるということの不思議。 久し振りに出会ったこの歌のせいで私の心はおもいっきりふくらんでいる。 今日、マオさんから「ねこんさーと」の舞台の中で歌われる歌の歌詞の依頼があった。このふくらんだ気持ちのまま内から出てくる言葉を待つとしよう。
|