たりたの日記
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バージニアに住むベスは1歳から16歳までを日本で過ごした。戦後すぐ、日本の復興を助けるために多くのアメリカ人が志願して日本にやってきたが、ベスの両親は日本にキリスト教を伝えるべく、生まれたばかりのベスを連れて九州は宮崎にやってきた。それだから、ベスの日本語は流暢ではあるものの宮崎便である。アメリカに帰ってからは日本語を話す機会もあまりなくなったが、夜、とても疲れた時は、気がつくと日本語でしゃべってしまうのだそうだ。またどこか自分の半分は日本人という気がするとも言っていた。 宮崎に住んでいた私の夫の祖母は、ベスの父から洗礼を受けた。また夫の母は娘時代、小さいベスのベビーシッターをしており、結婚式の時は、ベスの母のウエディングドレスを着て、宣教師館からお嫁入りをしたらしい。そういうわけで、ベスと夫は幼馴染みでもあり、付き合いはどこか親戚のような感じで続いている。
そのベスからメールが届いていた。このところ毎日のように届く。ほとんどがチェーンメールだ。どれも、このチェーンメールに貢献したおびただしい人の名前で始まっている。初めのうちは熱心に読み、時には翻訳したりもしていたが、あまりにも長い英文のメールがつらつらと続いていると、時間のある時にゆっくり読もうと思いつつ、読まないチェーンメールがたまってしまった。 彼女は熱心なクリスチャンで、牧師婦人。当然チェーンメールの多くは教会生活に関係するものだったり、キリスト教的な話しだったりするが、今日のなどは、「ストレスとじょうずに付き合うダイエット」というもので朝から夜食までの食べ物のリストがあり、おやつにはキスチョコレート一袋、夜食はハーゲンダッツのアイスクリームと、スニーカー(チョコレートバー)などととんでもない。メールの最後には、もしあなたがこのメールを2人の人に送れば2kg体重が減り、知ってる女性すべてに送れば5kg減量できるでしょう。でも誰にも送らなければ、5kg体重が増えるでしょうとある。このメールを受け取り、ベスはきっと爆笑したのだろう。そしてニカッと笑い、ジョークが得意じゃないわたしに送ろうと思ったにちがいない。わたしがこれを本気にするか、このおふざけにいっしょになって乗るか、さもなくばあきれるか。ベスはわたしのどんな反応を予想したのだろうか。ちなみにベスはかなりの体重がある。 こういう彼等独特のジョークに出会う度に、アメリカ人の逞しいおおらかさのようなものに触れ、笑いながら感心する。娘二人と夫の彼女の家は朝から寝るまで笑い声が絶えなかった。そして日に何度も家族どうしが "I love you!" と言い交わすのを聞いた。私もしばしば私の2倍はありそうなベスにむぎゅっとハグされた。この国では「愛」が目に見えるのである。照れくさくも、まぶしくもある。
先週、ベスから頼まれて、「ももたろう」の紙芝居を送った。彼女は近くの小学校に日本のことを紹介する授業をボランティアでやっているらしい。ベスが小さい頃、夢中で見ていた紙芝居をアメリカの子供達に見せたいのだそうだ。 ひらがななら読めるベスは、英語で説明しながら、日本語で読むのだろう。 ベスが、宮崎便のアクセントで演じる「ももたろう」はずいぶん魅力的なことだろう。
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