サーモンピンク・フラミンゴ
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2009年01月24日(土) |
親へのカムアウト・3 |
「なんでそんなに思ってること言わないの?」と母。 「秘密があったから」 「それはさっき言った、女の人のほうが好きってこと?」 「うん」
の続きからです。
「ならもっと早く言えばよかったのにー」と母。
言えない母親だったんだってば、あんたが。(いえ、ワタシにも大いに問題はありますが) とはこのときは思わず、なんだか安心しちゃって泣けた。
「だって言ったら、お母さんもお父さんもがっかりさせちゃうし。拒絶されたらどうしようって思ったし」 「言ったら拒絶されると思ってたの?」 「・・・うん」 「するわけないでしょーー。じょりぃさんはじょりぃさんなんだから」
また泣けた。
「あー、でもよかったよそれなら。 『この子は一生、ひとりぼっちで生きていくつもりなんだろうか、 こんないいこなのに誰からも愛されずに生きていくんだろうか』って お母さん、それが心配だったんだよー」 「おかげさまでものすごく愛されてます。いろんな人から」 <こんなときも虚勢張って、かわいげないワタシ 「じゃあ今はきょんさんがいてくれて幸せなのね?」 「うん」 ちょっとゴタついてますが。 「なら安心した」
安心した、と言われて、ワタシもどっと安心し、またどっと涙が出ました。
「・・・でも、お母さん、ホントは気付いていたでしょ?」 べそべそ泣きながらワタシ。 「何を?」 「女の子のほうが好きだって」
家を出るまでは、実家に女の子連れ込んで好き放題してましたしねワタシ。 もう、絶対気付いていたはずですよ。自信ありますわその点。 親にバレるのをいちばん怖がっていたくせに、いったいどういう自信なんだと自分に問いたいですが。 まして、観察力のあるマイマザーのことですから。気付いていなかったはずがない。 今もしらばっくれて、ワタシの言葉を引きだしたに違いないですよ。
と思っていたワタシに、驚愕の返事が。
「ぜんっっぜん、気が付いてなかった」
(°▽°)
「そうなの?」 「うん」
おそらく、母の意識の中に「同性愛」っつーもんがほとんど介在していなかったからでしょうね。 いやしかし、それにしてもこれにはワタシがビックリしましたわ。 親って子どもをよく見ているようで見ていないもんなんだなー、と。 でも考えてみれば、ワタシがいちばん「おさかん」だった、10代後半から20代前半は、母はメエのことでアタマがいっぱいだったので、ワタシにまで細かくアンテナを向けていなかったのかもしれません。
「それにしても」と母。 「そんな小さい頃から、親にも話せずひとりで抱え込んでいたなんて・・・かわいそうに・・・気づけなくてごめんね」
泣けた。
「正直なところ、お母さんは同性愛のことって全然わからないから、とまどってはいるけど」と母。 「うん」 「頭ではわかっても、感覚として今のところしっくりこないのは確か。 じょりぃさんに対する気持ちは今までと変わらないけど、正直、不思議な気持ち。心許ないっていうか」 「・・・・・」 無理もないかもなんですが、ちょっとしょんぼり。
でも、良いことばかりでなく、率直な母の感想を聞けたことで、「じょりぃさんはじょりぃさん。拒絶なんてしない」と言ってくれたことの信憑性が増したのも事実だったりします。
「でも、『どうせ話したってわからないだろうから』って勝手に思って、 今までみたいに気持ちを開かなくなるのはやめてね?」 「・・・わかった」 「お母さんたちは味方なんだからさ、これからはもっと何でも話してよ、ね?」 こくこくと頷くワタシ。そして「ありがとう」と。
ちょっと泣きが落ち着いてから、母にたずねました。
「このこと、お父さんに話すの?」と。 「話さないわけにはいかないでしょ? おまえのお父さんなんだから」 「お願い! お父さんには話さないで!」 懇願。 「なんで?」 「お父さん、ひどく落胆するよきっと。 自分の理想の娘(って誰だよ)でないとイヤだと思う・・・お父さんに悪い・・・」
ここで母、きっぱりと
「おまえは、お父さんを見損なってるよ」と。
「お父さんはそんな人じゃないよ」 もう一度きっぱり。
いえ、お父さんはそんな人だと思います。 なんだって自分の思うところのパーフェクトじゃなきゃ気が済まないじゃん。 だからワタシの図工にも手を出したじゃん。部活だってそうだったじゃん。 ワタシの身だしなみや髪型、姿勢から立ち居振る舞い、いちいち口出してきたじゃん。 そんなお父さんは、お父さんの思う「普通」でないことに、ショックを受けると思う。 それに、比較的感覚がフラットで柔軟な母が「頭ではわかっても感覚としては・・・」って言うくらいですから。 母よりも頭が固い父がどんな風に感じるかと思うと、お父さんには知られるのは怖い。 ワタシを見る目が変わるはず。それはいやだよう。
とワタシは強く思いましたが、ここは伴侶であるところの母に判断を委ねることにしました。 母がきょんのことを認めてくれたのですから、ワタシも母のパートナーであるところの父を信用しなければ、と思ったのであります。
そして。 しーーーーばらく経って、後日実家に寄ったときのこと。 「お父さんに話したよ」と母。
ワタシ、怯えながら「・・・なんて言ってた?」と。
「何がどうだって、かわいい娘には変わらないって。 じょりぃはじょりぃで、自分たちはその親だ、 親は子どもの味方してかわいがるもんだ、って」
えええええええええ!!!???
それ・・・お母さん、無言の圧力かけて言わせたんじゃ・・・。 <うちの場合ありえます
でも、安心しました。 お父さん、今まであなたの愛情を信用しきれてなくて、正直スマンカッタ。
が、しかし。 この時点で、ワタシの両親、「同性愛」について、その他多用なセクについて、とことん無知なんであります。 なので細かく言えば多少引っかかる表現とかもあるのですが、その点を考慮にいれ、ていうかいれなくても、 「親が今までと変わらずワタシを愛してくれる」、しかも「お母さん、妹のほうが大事だったわけじゃなかった」ということがわかっただけで、ワタシにはもう怖いモノはなくなったのでした。 世間がワタシを拒絶したって、ワタシには帰る場所がある、という安心感。 今までどんなに「何があっても、じょりぃが何をしても、世界中が敵になってもじょりぃの味方だよ(´∀`)」と言ってもらっても 「そんなこと言ったって、ワタシのセクを知れば絶対そんなこと言ってられなくなるくせに」と思っていたワタシであったわけですが、 初めてその言葉が何の抵抗もなく、ただただ感謝の気持ちをもってワタシの中に入ってくるようになったのであります。
そして、ワタシは家族の中で「透明」ではなくなりました。 なぜ透明でなくなったかといえば、親がワタシを認めてくれたから・・・と最初は思っていたのですが、よくよく考えてみれば、ワタシが家族を家族として認めたからなんじゃないかと思います。 「あなたたちはおそらくワタシを認める気はないでしょう」と、ハナから家族を拒絶していたのは、実はワタシのほうだったのでありました。 家族の理想像を勝手に描いていたのは、父や母だけではなくワタシも同じで、自分の居場所を確保するために、その理想像にカメレオンやプレデターのように自分の姿をそれらに無理矢理なじませて、結局家族から身を隠す結果になっていたのであります。 ワタシは色を変えることなく、ワタシのままの色でいてもいいんだと気づき、透明な存在ではなくなったのです。たぶん。
とまあ、ハッピーに親へのカムアウトを済ませることができたじょりぃだったわけですが(大泣きしたけどな)、その後、同性愛に関する話題が親からまっっっったく出ないことについて、「ホントにちゃんと受け入れてくれているのかなぁ?」「ワタシを安心させたくて、ちょっと無理してがんばらせちゃったのかなぁ?」と少々不安に思っていたりもしたのでした。 だってホントに、避けているかのように全然話題に出ないのです。
が、しかし。
親へのカムアウトを一応済ませたことにより、ワタシはきょんのことでウソをついたり隠したりということを、親に対してしなくて済むようになりました。 そうしましたら、それまで親との関わりをできるだけ避けていたワタシが、ちょくちょく実家にも顔を出すようになりまして。
「じょりぃはいいこだけど、なんだかよそよそしい」
と感じていたらしい両親も、これには喜んでくれるようになりまして。 将来のことも相談しやすくなりました。 実家でワタシだけご飯を食べて来るようなときでも、必ず「きょんさんの分がないのはかわいそう」と、何かしら持たせてくれるようになったり。 結婚の心配もしなくなりました。
もちろん、親としてはいろいろと思うところもあったと思います。 ただでさえ、娘の相手は世間一般に受け入れられる性別ではないわけですし。 母にカムアウトしたときも 「生きていくのが他の人よりも大変なんじゃないかって、そういうことはとっても心配」と言われました。 それに、子どものパートナーって、相手がどんな人だって、ある程度気に入らないところはあると思うんですよ。 余程子どもの出来が悪ければ「こんなのと一緒になってくれて・・・よよよよ」と感謝の涙のひとつもこぼすかもしれませんが、 両親にとっては、ワタシは自慢のムスメです。 何の取り柄もないワタシなわけですが、うちの親って親バカなのでそうなっちゃうわけですよ。
しかし、両親がきょんのことを悪く言うのを、ワタシは一度も聞いたことがありません。 これねー、自分の親ながら、なかなか立派だなーと思います。 だって、姑なら、いろいろ言いたいことありそうなきょんだもの・・・。(きょんにはナイショにしてくださいね( ^ ∀ ^ ))
とはいえ。 特に父親に関しては 「ホントにワタシときょんの関係、わかってんのー?」 と思うような発言もちらほら出てくるんですよね。無邪気なだけに。 あまりにも軽やかにぽろっと出てくるもんでちょっと具体的に思い出せないんですが、まあそのうち誰かと結婚するんでしょ、みたいな、そんな雰囲気のことを言ったり。
あれー? とは思うものの、まあもうそれならそれでいいや、とも思うじょりぃ。 ワタシのこともきょんのこともかわいがってくれているんですから、それで良しとしておいてもいいやー、と。 とりあえずワタシはもう親に隠し事をせずに話ができるわけですし。 うかつなことは話せない!と、頑なに心を閉じていた年月を思うと、ワタシもさびしかったですが、親もさびしかっただろうなと反省したりもしました。
と、感謝したり反省したりしつつも、カムアウト以後、セクについての話はとんと振られませんし、ワタシもわざわざしませんし。 親はいったいどういう感覚でとらえているんだろうか、本当はわだかまっているんだろうか、なんてちょっと悩んだりもしておりました。 しかしそのまま、うやむやにして何年も何年も過ぎ。
そして、先日の「ハートをつなごう」発言が母から出たわけです。 「じょりぃさんさー、NHKの『ハートをつなごう』って番組、知ってる?」と。
やっと話が現実に追いつきました。長かった。
でもさらに長いんですよ! そろそろあくびも出てくる頃かと思いますが、次回に続きます。
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