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2006年01月28日(土) 『関係性のなかの〜』の合評会

朝から東京大学へ。午後から、ある研究会で拙著の合評会を開いていただけるということで、出席させていただく。この研究会は東大の教育(歴史)社会学の世界では有名なH先生を代表として、矯正施設における教育方法を考えるという研究会。

我が国の監獄法が100年ぶりに改正され、これまで更生・矯正教育を受ける必要がないとされてきた犯罪者もまた、(少年と同様)適切な教育を受けることになった。この改正には、性犯罪や薬物犯罪などが問題になっていることにも関連しているのだろう。

ともかく、当面、少年の矯正教育で用いられている手法を援用することになるが、大人と子どもとでは自ずから違うのだし、そのために有効な方法を探ろうということだ。で、これまでほとんど接点のなかった法務省と教育学者が恊働しようということになったそうである。教育学者側からは、拙著でもたびたび引用させていただいている対話的エスノグラフィーのK先生をはじめとして、そうそうたる顔ぶれで、これは成果がでるのが大変に楽しみな会である。

さて、研究会では、当面は理論的な整理、検討を行うということのようで、拙著はテーマ的にあっていることもあり、ふまえるべき先行研究として選んでいただいたわけである。大変、光栄なことである。ただ、私はどれを自分の専門だと言おうとも、ちょっとハズれた位置にいるという自覚がある。エスノメソドロジーや構築主義的社会学研究を心理学にとりいれてはいるが、それでも本家からみれば、かなり理論的にも方法的にも不純だし、不徹底な箇所があることは自覚している。だから、どう評価されるのかは正直いって不安だった。

というわけで、少なからずびびりながら向かったのだが、K先生からもH先生からも好意的にうけとめてもらえたのは大変うれしかった。とりわけK先生は私がこれまでやってきたエスノグラフィーを考えるうえで基盤のひとつでもあったが、これまで一度もお話させていただく機会がなかった。言説やナラティブの分析が、どうも平面的な印象があるところに、時間軸をいれこんでそのなかでの揺らぎをふくみつつ、そこに可能性をみていこうとする研究になっているところが面白いという評価をいただけたのは、私が意図したところでもあったのでうれしかった。また、難しいことでもわかりやすく、過不足なく書いていて「読ませる」ものになっているという評価をいただけたのもうれしかった。

さて、方法論的な部分はともかく、この研究会の骨子であるところの矯正に関しても、現場の方の意見をお聞きして勉強になったし、矯正関係の方とも親しくお話させていただき、これからの研究も頑張っていこうと元気をもらえる会であった。


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