英語通訳の極道
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私は、通訳エージェントに登録していない。 もしかして、モグリ?
これには、経緯がある。
アメリカから戻ったばかりの頃、就職なども考えずいきなり帰ってきたので、食う手段を考えなくてはならない。じゃ、通訳をしようという、短絡的な思考で決めてしまったのだ。^^;
いや、それは冗談で。通訳・翻訳は25年以上前から興味があり、ニシヤマ先生、クニヒロ先生をはじめ、大先生方の本を読み、English Journalで、関連記事を読んでいました、はい。
とにかく、日本の事情がよく分からんから、知り合いに相談した。たまたま、大学時代の後輩で、通訳としてバリバリ仕事しているのが何人かいた。
「あのぉ、オレ通訳で食っていこうと思うんだわ。ついては、学校とか通って、ノートテーキングとか、ギョウカイの作法とか、勉強したほうがいいと思うんだけど、何かアドバイスしてくれない?」
すると、学生時代、鬼のようにシゴイた後輩曰く、 「先輩、学校なんか行く必要ないですよ。私も長いこと通いましたけど、学校で習うことって、仕事に必要なことの5分の一くらいしかないですよ」
「でも、いろいろ基礎を勉強したほうがいいんじゃない?ノートテーキングとか?」 「仕事をしているうちに分かってきますよ。学校に行っても、きっとつまらないと思う。まわりのレベルとか」
「大丈夫かな、オレ自信ないんだけど、ノートテーキングとか」 「確かに、学校でもいろいろ役に立つこと習うけど、自分でも勉強できますよ」
「そうかなあ、でも、ノートテーキング‥‥」 私は、ノートテーキングが苦手なのだ。^^;
「先輩だったら、エージェントに登録して、すぐ仕事したほうがいいんじゃないですか」 ということで、説得されて、行ったのだ、あるエージェントへ。
しばらく待たされて出てきたのは、少ししょぼくれた、営業マン風の中年男性。彼曰く、 「あなたは、通訳より、翻訳をしたほうがいいですよ」
「でも、どちかというと、通訳の方が性にあっていると思うんですが‥‥」 「翻訳にしなさい。その方がいい‥‥年齢をね、考えると」
ね、年齢?まだ、30代なんだけど?
「通訳は、若い人でも大変ですからね」
でも、わたしは、通訳をしたいの。しゃべるほうがいいの。外に出たいの。通訳の報酬が必要なの。
「どうです、翻訳のほうをされては?」 「はぁ‥‥」
ひとしきり世間話の後、男は出て行ってしまった。私の経歴も、職歴も、女性遍歴も(関係ないか ^^;)聞くことなく‥‥。彼が、私について知ったことは、アメリカから帰国したということと、私の年齢だけだった。
こうして、私は年齢だけで、そのエージェントに断られた格好になったわけだが、これって考えたら、おかしかないか?老人差別じゃないのか!
時間が経つにつれ、少しずつ怒りと悔しさがこみ上げてきた。
「クッ、クソォー、絶対にお前とこなんか、頼まれても登録してやらねえぞ」 人通りのないエージェントの建物の前で、私は、小声でそう叫んだ。
ということで、それ以来エージェントに登録したことがない。でも、幸いなことに、今まで仕事は次々とあった。運と、人との繋がりが良かったんだねえ。感謝。
今振り返れば、私にも非があったかも知れない。
何しろ、その日、
というカッコで行ってしまったんだわ、登録をしに。^^;
社会常識が欠如してたのね、アメリカボケで。中年営業マンの対応も、今なら理解できないこともない。
でも最近そろそろ、エージェントを避けては通れなくなった。ビジネス会議や取材・イベントなどの通訳だけではなく、国際会議やメディア通訳など、トップクラスの通訳に挑戦しようと思ったら、エージェントから逃げているわけには行かない。
どうしよう、登録しに行って、またあのオヤジが出てきたら‥‥
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