|| 2006年06月20日(火) 悪の秘密結社属性 ||
■ちょっとだけわくわくしていた私の気持ちを一気にぶち壊してくれた先週の「ガラ艦」。主人公の敵役であるキャラ、その過去の虐待ネタなどというものは、本来の立場を逆転させる一番簡単で楽チンな方法。そして、そういう小賢しさが私は大嫌いだ。しかも現在進行形で不治の病チックな保険までかけているという周到さ・・ヴェッティ様をどうしても悲劇のヒーローに仕立てたいご様子。悪役の悪役たる所以に陳腐な理由付けをして、最後にお涙頂戴などというシナリオだけは勘弁してもらいたいところだが。これが「ラグーン」のクルー達なら、どんな過去であろうとも「だから何?」などと一蹴してくれるのだろうけれど。
■私は、複雑な理由を抱えた悪役よりも、自分勝手なポリシーに忠実な悪役が好きだ。そういった意味で「フルメタ」のガウルンなどは、その理想形だと私は思う。そして、そんな悪役を演らせたら右に出るものはいないであろう田中正彦の悪役っぷりが大好きである。これまでにも「ガングレイヴ」のブラッド・ウォーや「奪還屋」の不動など、執拗で凶暴で非情で狂気に充ちた、すっばらしい悪役っぷりで魅せてくれている。悪役ではないが、彼が演じた「頭文字D」の須藤京一や「十二国記」の月渓なども印象に深い。
一口に<悪役>といっても、その在り方は様々だ。子安で例えるならば、ていうか何故子安で例えなければいけないのか自分でもよく解らないが、とりあえず例えてみるならば、ひとつは「無印」の赤法師レゾや「モンコレナイト」の赤き死の天使レダのような、正統派チックな悪役。多少の事情は抱えつつも、己の欲望に忠実な愛すべき憎まれ役。 更に、「ガングレイヴ」のバラッドバート・リーや「ガドガード」のタケナカ、「スピグラ」の白金克也、「サムチャ」の馬之介のように、狂気と凶暴さに比重を置いたヒットマン的悪役。特にリーは、私の中でかなりのセンセーショナルを巻き起こした強烈なキャラだ。 そのほかにも、悪役というよりはライバルというノリのキャラ、例えばゼクスなどがそうだし、あと、悪役と呼ぶにはあまりに可愛すぎる「キングゲイナー」のアスハムなど、本当に様々。そして、上記は<敵役>と呼ばれるほんの一部の例にすぎない。
アニメに限らず、正義の定義とは酷く曖昧なもので。善と悪の間には、もの凄く巨大なグレイゾーンが横たわっている。「敵役は味方の補充要員」とはよく言ったもので、<悪役>といっても、その立ち位置はとても不安定なものであり、些細な情報操作でどちら側にも転び得る存在である。 敵役側の正義をクローズアップすることで客観的な共感を煽ったり、悪役が悪に身を投じる背景を描いて同情を集めたり、と、絶対的な立場と運命を印象付けて本来敵役である存在を<もう一人のヒーロー>として確立させたりする。歴代のSFアニメなんかによくありがちなアレだ。 私はどちらかというと、もっとわかりやすい悪役、例えば「ラスエグ」のマエストロ・デルフィーネ様のような天然且つ純粋培養の一番始末に負えないタイプが好きだったりするのだが、上記の情報操作で思わず落ちてしまった敵役も少なくない。「アクエリオン」のトーマがそうだし、「スピグラ」の水天宮がそうだろう。ただ、それでも、単純にその凶悪っぷりで最後まで突っ走ってくれる<悪役>の方に大きく惹かれたりはするけれど。
私の中で<悪役>といえば、前述の田中正彦氏が一番固いのだが、他にも大好きな役者さんは大勢いる。声の渋さでは誰も太刀打ちできないであろう大友龍三郎氏、天才とナントカは紙一重的な悪役なら絶対芳忠さんだし、お茶目なラスボスには千葉繁氏、厭味でちょっとヘタレな藤原氏の悪役も好き〜ゥ
さて、忘れてならないのが「タイムボカン」シリーズなどでおなじみの悪役一味。「ポケモン」のラブリーチャーミーな敵役は間違いなくその流れを汲んでいるだろうし、露骨なところでは和彦さん演じたコレクション伯爵なんかがそうだろう。ばいきんまんやドキンちゃん、「マイメロ」のクロミなども子供の目で見れば明らかに悪役であり、私がちょっとでもクロミちゃんを擁護しようものなら、娘にもの凄い勢いで怒られたりする。子供にとってのアニメは、善悪の基準を形成するのに、少なくない影響力を持っているのだなあ、と思う。
何にせよ、世代、時代を超えて、愛すべき悪役が存在してこそ、わくわくも萌えも大きくなるというものだろう。
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