囁き
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2001年04月25日(水) |
尾崎さんの命日&その他 〜『冷たい風』〜 |
結局歌碑には行けなくて、誰もいない部屋の中、一人で彼のギターを弾いていた。近所迷惑かもしれないけれど、大声で。ギターもかき鳴らして。ガラス一枚隔てた空に向けて歌った。届くように?もしそうならば、それは彼へ?それともあの場所へ? 少し疲れて、窓を開けて煙草を手にとった。煙が、外へと流れていく。静かに風が吹く中、煙草をふかしていた。 風の匂い、雨の匂い。 あの場所の匂いがしたような気がして、何時の間にか俯いていた顔を上げた。出会い、慰め合い、励まし合い、語り、歌い、笑い、騒ぎ、そして愛を作り出したあの場所。朝の景色、昼の景色、夕の景色、夜の景色。全てが頭をよぎる。そして残ったのは、一人で眺めていた夕日と、そして夜のネオン。幾つも、幾つも。 数えきれないほど見た景色。一番長い時間を過ごした場所の一つ。色々なことを学んだ場所の一つ。友がいなくても、ギターがなくても、彼がいたという事実とあの景色さえあれば、いい。 不意に、涙が浮かびそうになった。何故か、もう彼がいないことを強く感じた。もう一曲歌って、友人になんとなく電話をかけた。 なんてことない話。ただの暇つぶしといっても過言ではないくらいの。けど、相手はもうすぐ子供が生まれる夫婦。あと2ヶ月ほど。新しい生命を宿している人と話していることを、何故か不思議に思った。もうすぐ親になる二人と話していることを。 電話を切り、ラジオを聞きながら布団に潜る。彼の話が出てくる。最近公開される映画と共に。イベントが行われているようで、その場所の話をしていた。まだ多くの人に、彼は愛されていた。いまからでも歌碑にいこうと思ったけど、やめた。あまり顔をあわしたくない。親もうるさいし。だから、聞いていた。渋谷の何処かの会場は、多くの人でで溢れているようだった。嬉しかった。泣きそうになりながら、またギターを弾いた。 そして夜中、ついさっきまで彼女と電話をしていた。25日を跨いで。何故だろうか、それだけで嬉しかった。この日が終わるときに、彼女の声が聞こえているだけで嬉しかった。
ねぇ、尾崎さん。僕にも、ほんとに好きになって、付き合う人が出来たんですよ。あの場所でであった、最初から終わりだって分かってる愛じゃなくて、出来るならば一緒に歩いて生きたいって思える人が。あの場所に沢山書いてあるメッセージにも、自分の愛した人のことがよく書かれていますよね。 ラジオで、あなたに伝えたいことっていうのを、茨城県の17歳の男の子がインタビューを受けていて、僕はあなたに何を伝えたいのかって考えていました。なんだろう、伝えたいことが多すぎて、何を言っていいのかがわからなくなります。あなたに伝えたいこと・・・一言じゃ、言えない。沢山の言葉を費やしても、言えない。言葉に出来ない思いがいっぱいです。断片的になら・・・生きている姿を見たかった。いま、どういう歌を歌っているのかが知りたかった。けど・・・それだけじゃ晴れなくて・・・ 4,5年ぶりくらいに、あの場所に行きませんでした。この家で、あなたのことを祈り、考えています。なんか、悪いような気が、少しします。なんだろう・・・感情が溢れ出して、なにも考えられなくなって・・・ あなたの姿が見たかった。生きている姿が見たかった。歩いている姿を、歌っている姿を見たかった。初めて、あなたがいないことをここまで寂しいと思います。 いつか、もう一度、彼女と二人であの場所に行きたいと思います。そのときに、僕はどう変わり、どうなっているのでしょうね? ・・・言葉が止め止めもなく溢れてくる。言いたいことが多すぎて、なにも言えません。感情が溢れて、思考は乱れて・・・近いうちに一人で、あの場所に行こうと思っています。昔みたいに、あの場所の、いつもの場所に座り込んで夕日を、ネオンを見たいって・・・ 伝えたいこと・・・なんでしょうね。あなたに言いたいことは沢山あるはずなのに、いざ書こうとすると、何を言おうか・・・ 本当に、本当にありがとうございました。そして、これからも・・・
『冷たい風』 『冷たい風が窓から吹き込んでくる 煙草をふかしながら 俺は深淵の闇を見つめていた 横には空っぽの酒瓶が転がり 震えながらも俺は窓を閉めるのを拒んだ 冷たい風と 酒の匂いだけが俺を 生きているのだと実感させた 夜が明ければまたすぐに いつもと変わらない日が訪れるのだろう そんなときはいつも 自分が生きているのかが分からなくなる 夜の冷たい風はいつも 俺が生きているのだと教えてくれる 深淵の闇の中から吹く 突き刺すように吹く 優しい風が
冷たい風が窓から吹き込んでくる 光が届くことのない 酒と煙草の匂いが染み付いた部屋に 人を愛することを忘れてしまった 人として機能していない俺の心の中に 冷たい風はその中にあるなにかで なぜか俺の心を癒していった 心も身体もいつも 傷だらけになってこの部屋に逃げ帰る そんなときはいつも よく生きてたと いつ死んでもいいと思う 夜の冷たい風はいつも 小さな痛みを伴いながら俺を包み込む 切り裂かれるように冷たい 痛みと優しさを共に持っている風が
夜の冷たい風はいつも 小さな光を心に灯してくれる 愛しい人と同じように 温かい心を持っているこの風が・・・』
何度か、もう乗っけてるね、この歌。中学頃の詩。結構好きなんだ。自分で書いたものだけど・・・気に入っている。 彼女に逢えない寂しさが、きっと今日、倍増されてると思う。いまは一人。開け放した窓から吹く風は、大好きな冬の風とは違って、もう暖かいけれど・・・安らぎを覚える。あいつに抱き締められたときと同じくらいの・・・ もう25日は終わった。次は彼のBirthday。その日は、僕と彼女の記念日でもある。二人の愛を、互いが口にした日。 何故だろう、涙が零れそうだ。その理由は、一体なんなのだろう・・・?
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