2004年09月04日(土) お小遣い
 

9/2からの連載になっています。まずは2日の「赤い糸のあなたとわたし」からご覧ください。


とはいうものの、どこまで続くのだろうこの糸は。
わたしは赤い糸を見つめながら大きなため息をついた。

「まさか外国じゃねーだろうな。」

赤い糸が答えるわけもなく。
もう3日間も歩き尽くめだった。
わたしは大きなボストンバックを地面に下ろすとおもいきり伸びをした。
首がごきりと鳴り、少し痛かった。

(少し休んでいこ。)

わたしは近くの公園のベンチに腰を下ろし
取り出したペットボトルのお茶を一気に飲み干した。
日差しがさんさんと降ってくる。
わたしはのんびり空を眺めながら自分の小指を見つめた。

もう何度も確かめて。
嫌になるほど目にした。
赤い糸がやはりそこにはある。

(なーに、やってんだろうなー。)

知っている。恋人と別れた原因がコイツではないこと。
でも心のどこかで気にしていた。
こんなにも愛しているのに、どうしてこの人と繋がっていないのか。
何度思ったことだろう。
知りもしない赤い糸が繋ぐだけの男なんか。

(やっぱり、やめようかな。こんなこと。お金もないし。)

ひどくばかばかしくなって。わたしは立ち上がった。
と、ベンチの後ろに黒のボストンバックがあることに気づいた。
わたしは不審に思ってバックに近づき、何気なくあけてみる。
中には帯がしてある1万円札の束数十個と小さな茶色い犬がいた。

「まじっすか。」

どうやら神さまはわたしを運命の人に会わせないと気がすまないらしい。
わたしは太陽がさんさんと照らす青空を見上げ、苦笑した。

わたしは1万円札の束ひとつを自分のボストンバックに入れて立ち上がる。
小さい茶色の犬(多分柴犬?)が目を輝かせてわたしを見るので
彼も連れて行くことにした。

「よろしく、諭吉。」
「くぅん。」

諭吉と名づけられた彼は尻尾をふりふりして嬉しそうである。

「神さまもなかなかやるねぇ。」

そう言って吹いた口笛は、青い空へと消えてった。





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