2004年08月19日(木) 偽物のせかい。
 

どこまでも快晴なのに外はどしゃ降りだった。
青い空、散り散りの雲、大粒の雨。
わたしは傘を差しながら(なんて天気だ)と毒づいた。

狐の嫁入りにしては、まるで台風が襲ってきたかのような雨である。
うそ臭いほどの青い空とさんさんと輝く太陽が
皮肉げに笑っているかのように貼りついている。
まるで(バーとかで使う)特大の氷のような大粒の雨に
わたしの赤い水玉の傘はみしみしと悲鳴を上げた。(こんなばかな話があるか。)

わたしは空を見上げる。
うそみたいに晴れた空。
もしかして、これが本当はにせものなんじゃないかと疑ってみる。

ずっと昔に、普通の人生を歩んでいると思っていた男の生活が
じつは全部作り物だったという映画を見た。
もしかしてこの世界もそうなのだろうか。

疑い始めると何もかもが疑わしくなってくる。
たとえば上司のちょっと浮いたように見える髪の毛とか
同期に入社した女の子の形のいい筋の通った鼻とか
グラビアアイドルのIカップとか。

わたしは一通り空を見つめたあと、ため息をついた。
にせものばかり探しても仕方がない。
わたしはこの青い空を気に入っているし
今の家も入社したばかりの会社も友達も彼氏はまだいないが
全部気に入っている。そして気に入らないこともある。
それでいいじゃないか。

知らなければならないことがあるように
知らなくてもいいことが世の中にはあるものだ。

(あ、やんだ。)

雨は何の前触れもなく、すっとその姿を消した。
わたしは傘の下から空を見上げる。

そのとき、空の一部が剥がれおちた。
けれどわたしは何も見ていない。

見なかったことにする。





↑エンピツ投票ボタン

my追加
いつも読みに来てくれてありがとう。
※マイエンピツは告知しないに設定しています。