130万個の餃子 - 2002年04月14日(日) 10年前に住んでいた隣町の歯医者さんに行ってきた。 駅にして1駅しか離れていないので、この1年の間にも何回か車で通りかかったりはしているものの、駅前を歩いたりするのは久しぶりだった。 歯医者さんには、当たり前のことだが、同じ先生と同じ助手の人がいた。 最初に撮影したレントゲン写真には、今は亡き凶悪なオヤシラズも写っていた。 何となく不思議な気分になる。 この10年、何をしていたんだろう、私は。 たぶん、引越しは7回。 アルバイトを含めると10本の指では足りない種類の仕事をしてきたと思う。 同じ場所に、同じ人がいて、少しだけ年を取って、同じ仕事をしている。 そんな当たり前のことが、私には夢を見ているように感じられるのだった。 帰りがけ、駅前にある小さなデパートに寄った。 10年前、小学校に入ったばかりの娘を連れて、よく買い物にきた場所だ。 このデパートには地下の売り場がないので、1階に食料品売り場がある。 少しレイアウトが変っていたが、見違えるような変化はない。 エスカレーターの横にある餃子屋さんのブースでは、見覚えのあるお兄さんが(お兄さんというより若干おじさんに近くなってはいたが)、相変わらず黙々と餃子を包んでいた。 ますます不思議な気分になる。 私が東奔西走してジタバタしたあげく、ぶっ倒れたり寝込んだりしている間に、餃子はいくつ包まれたんだろう? かなり少なめに見積もって、1日500個×週5日勤務としよう。 他に、肉まんやシュウマイも作っていたはずだからね。 1週間に2500、1年で13万、10年で130万・・・。 130万個の餃子が、時間の流れに沿って1列に並んだところを想像すると、かなりすごい。 列の後ろの方は豆粒のようになり、米粒のようになり、それでも続いていているように見えるのだろうか。 もちろん、そのお兄さんだって、10年の間にはいろいろあっただろう。 結婚してお父さんになったかもしれないし、宝くじを当ててマンションを買ったかもしれない。 もしかしたら、黙々と餃子を包んでいるのは仮の姿で、実は社交ダンス界のスーパースターだった、とか、長期休暇にはアマゾンに行っちゃう探検家だったりするかもしれない。 でも、今は10年前と同じように餃子を包んでいるお兄さんがそこにいて、私はその姿を見ている。 逆に、お兄さんが私のことを覚えていたりすると、どんなことを思うのだろうか。 しばらく見ないうちに、この人ずいぶん老けたな〜。 でも、10年たってフラリと現れるなんて、ちょっと怪しい人だよね。 主婦って感じでもないし・・・もしかしたら某国の工作員かもしれないよな。 それとも、夜逃げ屋とか?? くわばら、くわばら、何が起こるかわからないのが世の中だからね〜。 こっちに来たら注意しよう。 な〜んて、ね。 なんでもない日常の一コマにこそ、不思議がいっぱいなのである。 ...
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