「告白するとね」
「うん」
「ユミちゃんとは……」
「…」
「Bまで」
「Dまで?」
「…Bだよぉ」
「B!!」
「…」
「AをクリアしてB!!!」
「何その驚き方(笑)」
「だってAをクリアしたほうが嫌!!」
「えええーー」
「てかBねぇ……ユミちゃんの車の中で?」
「んん〜」
「(想像中)……ふぅ〜ん……」
夜中の電話。 メールのフォルダの真相を追及して、この話。 フォルダのロックは既に外されていて、 中身は、高校時代のテニスの先輩の女性からのメールであった。
散々、ちょっと好きだったんだろうだとか正直に告白しなさいだとか、 昼間に追求したのだったが、 何にも感じていない、お前を驚かせるためだけだったの一点張り。 どうにも納得がいかない私であったので、 電話でも持ち出してみた。
嘘か本当か、察しあぐねていた。 可能性がゼロということもない。 が、信じる私の反応を面白がろう、という思惑もありそう。 ここ最近何かを隠している様子は、見られなかった。 合コンに行ったことも素直に言ってしまう人なのだから。
口調は、確かに本当のことを言うときのそれだ。 嘘を言うときは何かしら違ってわかるものだが、 口調からは今回はわからない。
そんなことはあるわけがない、という安心感のなかに、 ぴりっと、もし本当だったら、という痛み。 かと言って嘘だったら、馬鹿なことを信じてしまった女ということになる。 プライドの高いあたしは、 どの反応をするべきか悩んでいた。
80%くらいで嘘だろう、と踏んでいたのだけど… 20%を無視することは出来ない。 一応、本当だった場合の心がまえをしておく。
あたしに対する態度は何も変わっていず、 むしろ昔より優しかったけれど、それはもしかしたら罪滅ぼしなのかもしれない。 冷たくなった、なんてことはなかったけれど、 魔が差したようなものなら納得もいく。
そんなことを考えながら、
「嘘やろ?嘘やろ?」
と笑いながら寺島に問い掛けている。 寺島も笑って答えるだけ。
しばらくその無意味な掛け合いが続いた後、 寺島が別の言葉を出した。
「嘘やろっていうけど、本当のところはね」
「うん」
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