日付は変わって既にバレンタイン。 昨日はレジを打っていても、 女子高生達が板チョコレートを大量に買っていったり、 生クリームはどこも売切れだと言いながら親子が出て行ったり、 なんとも微笑ましくて、みんな大事な人がいるんだなぁってジンとした。 常連の女の子もガーナを買っていって、 照れた可愛い笑顔をあたしに見せてくれた。
そんなあたしも、 今日に大きな期待をかけている誰かさんのために材料を買い込む。 作るってバレバレだなぁと思いながら自転車をこいだ。 ちなみに、あたしが買いに行った大きなスーパーも、 生クリームは売切れだった。
寺島は最近、祥子ちゃんで練習してるらしい。 今まで人付き合いのために人を褒めたことがなかったから、 やってみてるんだって。
「告白してうまくいかなかったときもさぁ、
あんまりその人のこと褒めてなかったよ。
やっぱ褒めてオトさなきゃね」
「そうそう。
あたしみたいに勝手にオチてくれる女なんていないんだから」
言い終わってはっと気づいた。
「あ、いや、だから大事にしろって言ってるわけじゃないんだけどさ」
あたしが言い終わらないうちに、寺島がかぶせてきた。
「うん、だから大事にしてるんだけどなー」
最近そのセリフが真実であることが悔しい。 この会話は寺島がバイト先に迎えに来てくれて、 すれ違ったもののなんとか合流し、ファミレスに行った帰り道だった。 それぞれ片手にはこれから私の部屋で食べる物を持って、 片手は寺島のジャケットのポケットの中で繋がれて。
ポケットに入れていてもちっとも温まらない寺島の手。 子供のときから温かくて人気だったあたしの手は、 最大限に役に立っている。 素直に嬉しい。 寺島は喜ぶより、不思議がっているけれども。
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