under one umbrella

2006年02月07日(火) まさか



長い長いキスの後、強く強く抱きしめられて。
酔っていた私の頭は、それ以降の記憶が曖昧だ。
眠そうにしていた私を見て、寺島が帰った。
布団に倒れて、私はまさしく泥のように眠ったけれど、
9時には起きた。
「昨日の続き」
そう言って、寺島が来たから。




こんな安心感は、いつぶりだったのだろう。
いつまでも寺島と布団の中で、温かく過ごした。
昨日以上の喜びはないと思っていた。
何も怖くなかった、既に。




しかし、寺島は私にとどめを刺す。
彼は最初言うのをためらったけれど、私がせがんだ。
まさか、
2度と寺島から離れたくなくなるセリフとは思わずに。








「ねぇ、まだバカな幻想にとらわれてるみたいだけど…」




「ん?何?それ。何のこと?」




「ん、いや、やっぱやめとく。言わない」




「言ってよーー、気になる気になる気になる」




「んー…言いたくないなー」




「気になるー」




「んとね」




「うん」




「もしもね、これから先」




「うん」




「梅宮さんから告白されても、『彼女いるから』って、ちゃんと断るよ。


大体俺、あの人の顔も声も覚えてないんだよ?


すれ違っても気づかない。


だから、もうそんな幻想、気にしないで」













しばらく声が出なかった。
代わりに、お決まりの涙がこぼれてこぼれて、
「あーやっぱり泣いた、だから言いたくなかったんだ」
と寺島に言われながら、抱きしめられた。



天地がひっくり返った気がした。
寺島の中で梅宮さんは、誰も越えられない人のはずだったのに。
いつのまにか寺島の中で時が過ぎて、今は私がいるみたい。
どんなに寺島が私を好きになっても、このセリフだけはもらえないだろうと思ってた。




2度と傍を離れたくない。
ずっと手をつないでいたい。
そんなことを、怖がらずに思えるようになった。
そのために歩いていきたいと思えるようになった。


私、あなたに必要とされてるんですね。
本当に。
頑張っていいんですね。あなたとの未来のために。
そんな自信すらなかったの。







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「ね、好きよ」


「俺も」



そんな短いセリフが、ずっと欲しかったの。







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