under one umbrella

2006年02月05日(日) 忘れた。




私が、他の男に必要以上にベタベタしたり、
他の男の話ばかりしたり、というようなことが原因で喧嘩したことは、
これまでに何度もあった。


その度に寺島は私をシャットアウトして、
私の声など何も聞かないし、何も働きかけてこない。
数日したら怒りがおさまって、普通になって、
後はその話題を少し話す程度。
機嫌もよくなって、いつもどおり。


元のように仲良くなるわけだけど、
私がしっくりいくはずない。
これって仲直りっていうの?って。
いつも思ってた。
いつも「?」がついて。
どうなるの?これ?って。
どうなるの?私の気持ちは?って。


そうやって寺島が私と向き合ってくれないことは、
不安を生み出す最大の原因で。


好かれてる自信なんかなかった。
隣でいつも笑って、好きよって言って、
寺島を満足させるために置かれてるんだと思ってた。

それは極端な話であって、
多少なりと寺島が私を好いてくれてることは知っていたけど、
この日の発言も未だ頭から消えていなかったし、
いつか、
もっと愛せる人をこの人は見つけるんだろうと思ってた。





だから。
寺島がこんな風に、ずっと私と向き合って話すことがあるなんて。
思ってもみなかった。

私を腕の中に入れたまま、
じっと私を見ていた。




その瞳に、私がまだ混乱しているうちに。
寺島が口を開いた。





















「もう、忘れた。

お前が今夜何をしてたかなんて。







でも。

今度やったら許さない」



あ。



















許して、くれた。




私のしたことに怒りつつ。

それでも私との未来のために。

怒りを抑えて。

忘れると。




あぁ、そんな風にあなた自ら。

あなたの感情を抑えてくれることなど、初めてだったの。

私といるために私のしたことを許してくれた。

それを私の目を見ながら言ってくれた。

そんなこと本当に初めてなの。

私は初めて。

あなたに、ありのままの私の全てを受け入れてもらえたような気がした。















「ありがとう…」




















私が泣き出しそうになったのを察知して、
泣き出す前に、寺島が話し掛けた。





「お前は、誰の女だ?」






涙で脳がぐちゃぐちゃになっているのを感じながら、
「寺島陽介の女です」と答えた。








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こんなキス、いつ以来だっけ。






「ごめんなさい………」





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