2006年02月02日(木) |
こんなはずじゃなかった |
いつもだったら、もう家に帰っていたところだ。 私の顔など見ないところだ。 現に私の腕は振り払われた。
「侮辱されたのと同じだ」
そこまで怒っている。
「別れようか?」
返事はない。 けれど帰らない。 部屋に行こうという私の提案に頷く寺島は、今までの寺島じゃなかった。
ストーブがつく。 酔ってぼうっとする頭に、熱が気持ちいい。 ストーブの後ろの椅子に寺島が座った。 微妙な距離で私が喋りだす。
「嫉妬してるのは知ってたよ、今までだって。
だけどそれはあたしが好きだからだ、なんて思えなかった。
そんな自信が持てるような言動は、あなたはしなかった。
メールも簡単にシカトするし、八つ当たりするし…
…あたしは、確認したかっただけ。
あたしが寺島陽介の女だって、確認したかっただけよ…」
口がよく回る。 いつも頭にあったワードが飛び出してゆく。 意外と思えるほど早く、寺島が口を開いた。
「…悔しいんだ。
相手を殴りたいほどに嫉妬する…そこまでお前を好きなことが。
出したくないんだ。
こんなはずじゃなかったから。
最初はこんなにまで好きじゃ、なかったのに」
そう言って立ち上がって、 私の目の前にあったストーブを動かした。
用意はほどなく終わった。 3分後には、毛布の中で、寺島の腕の中だった。
まだ私の頭は混乱している。
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