ねぇ、どんなに楽しい時間を過ごしても。 どんなに多くのキスをもらっても。 あなたの梅宮さんへの想いを忘れることが出来なかった。 私の弱さだったのかな。 逃げだったのかな。
今までに何度となく、こんな話し合いをしたね。 私が他の男の人と必要以上に親しくするのを、あなたは嫌った。 それはあなたが元来持つ独占欲なのか。 一般的な男の身勝手な思いなのか。 あなたが私を本当に好いてくれているからなのか。 いまいち私にはわからずに、苦しかった。 それでも離れたくなかったから。 見て見ぬ振りをしてきたの。
相変わらず、あなたは何も言わない。 言ってくれない。 あぁ、この人はまた目をつぶってしまおうとしている。 傷つけたのは確かに私。 でも、私が苦しんでることにも気づいてよ。 いつからこんなに我侭になってしまったのかわからないけれど、 苦しみを我慢し続けることが、あなたとのためになるなんて、 多分間違っている。
寺島は確かに目をつぶろうとしていた。 私が体に添えようとした手を軽く払いのけた。 だけど今までと違ったのは、家に帰ろうとしないことだった。 私を見つめ続けていた。 正直途惑った。 こんな反応は初めてだ。
「俺が今までに、嫉妬をあからさまにしたことがあったか」
「ううん。
そんなことはなかったし、あからさまではなくても嫉妬していることは知ってた。
だけどその嫉妬が、どんな感情からくるものなのか、わからなくて。
梅宮さんのことがまだ好きだって、あなたは言ったじゃない」
沈黙。
空気は冷たかった。 5m先には私の家があった。
「ねぇ陽ちゃん。
変な意味じゃないけれど、寒いから部屋に入ろうか。ストーブがある」
ここで寺島が頷いたことも、私には意外だった。
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