まさかここまでとは思っていなかったのだが、 今日寺島は、 何もなかったように接してきていた。
最初はちょっと不機嫌気味のようだったけれど、 笑顔が増えればそれも消える。 そういう点では、わかりやすい人だ。
あたしがひきずるわけにはいかない。 多分、以前からそういう学習をしたのだろう、 あたしの頭は切り替わっている。 横で笑うのは、まるっきりいつものあたし、だ。
そう、いつも思うのだ。
あぁ、もう修復不可能かと。
別に自分達の絆が脆いものだとか、 危うい関係だとか、思ってるわけでもないのだけど、 2人の空気が大きくずれるとき、 そんなことを考えてしまうのだ。
最終的には、 いやいや、そんなに簡単な関係じゃない、 っと信じて、行動して、 平穏が戻り、あぁよかったと胸を撫で下ろす。
最近忘れ気味だけれど、 寺島との今までで、 あたしはいくつもそんな経験をしたのだろう。 ある意味、 だからこそ今回も信じられたのだろう。
切り替えこそ早くなくて、 信じられなくて苦しかった夜は無駄じゃないと、 今は思える幸せ。
一方で、 終わっていいとも思った。 終わっても、歩き続けられる自分を知っていた。 それは寺島がどうでもいいわけじゃなく、 寺島に依存せずに生きている自分の部分が、 ちゃんとあると思えるから。
それらは、少しでも早くあたしの心の平穏を取り戻すのに、 役立っている。 いつもの自分に戻りさえすれば、何でも出来る気がする。
寺島と夜を散歩しながら。 自然に絡んだ指が嬉しかった。 寺島の歩調に合わせられる自分が嬉しかった。
何よりも何よりも。
もう、 あたしの携帯に残るムービーでしか見られないかと思った、 寺島の笑顔が嬉しかった。
今は、 それを最優先に考えても許されると思う。
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