under one umbrella

2005年05月02日(月) あたしは嫌だ。



恐怖で涙が零れるなんて久しぶりだ。
何度経験しても慣れない、
寺島を失うかもしれない、という恐怖。


藤原は、
「機嫌が悪かっただけだよ」
と、涙を流すだけのあたしを宥めてくれたけれど、
それを見落としていたあたしが悪かったのだ。
いろんな要因から、もう機嫌は直った、と判断した、
あたしが甘かったのだ。



陽ちゃんと何度呼びかけても、
寺島はこっちを向いてくれなかった。
ただ、部屋に向かって歩くだけだった。
呼び続けながら、
どこの昼メロだよっ!!!!!!!!
と嫌気が刺していたが、
呼ばなければ沈黙になるわけで、
その沈黙には耐えられそうにもなかった。




寺島が家への道に消えてゆくのを見て、
あたしはどこへともなく歩いた。
気がついたら、藤原の家の前にいて、
藤原に「泣くなよ」と笑われた。
ごめん。
でも1人じゃ。壊れてしまう気がしたの。
ありがとう。



藤原と、少しだけ話して別れた。
別の話もして、そのときは笑える自分が不思議だった。
頭を切り替える術を、あたしは身に付けたらしい。
便利だ。







泣いてその場にしゃがむのは簡単だ。
後ろ向きに歩いてみるのも、そう難しくない。
だけどあたしは嫌だ。
前を向かなければ何もないのだ。
歩かなければ始まらないのだ。
動かなければ、ゼロのままなのだ。


溢れる涙はそのままにしておけ。
怖くないはずがない。
愛する人を失うかもしれない不安が、
涙を必要としないわけがない。
その感情を拒否していいことはきっとない。

歩かなければ、涙も乾かないから。
とりあえず歩こう。
帰ろう、あたしの場所へ。







先のない道なんてない。
明けない夜と上がらない雨もない。
歩けばそこが道。
光が指せば未来が見える。


歩くことを怖がるな。
傷つくことを恐れるな。
守りぬけ。信じる気持ち。







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