under one umbrella

2005年05月01日(日) どれよ?



多分、今までで1番酔っていた。
1人で歩いて帰れなかったのは初めてだ。
大体、酔うのが早すぎた。
皆、ボーリングで疲れていたのだろう。



寺島は…相変わらずずるくて。
優しくて。温い。



「なぁ藤原。

こいつ酔っ払ってるから、送ってってくれよ」


心配なら自分が送ればいいじゃない。
何で人任せなの?
結局、あたしを優先させることは出来ないってことだよ。
そう思ったから。
藤原に送らせたりは、しなかった。
悪すぎるよ。
ちゃんと藤原の家の前でさよならした。





「ねぇ、大丈夫?

帰れる?」

そう言わせたのは、きっとあたし。
言って欲しいオーラを出してたことだろう。
言わせたくせに、


「うん。大丈夫」


と、少しだけからめた指を離したのもあたしだ。
酔っぱらいというのは意味不明である。







意味不明な酔っぱらいは、直後に電話をかけてみたりする。

「どうしたの?」

って電話に出る寺島は、優しいんだと思う。




「ねぇ、帰れないって言ったら、

ついてきてくれた?」



「うん。帰れないの?」



「帰れないかも。だって今歩けてないよ。

でも大丈夫」


「本当に?じゃ帰れたら電話してよ」


「んー」




1人になると、すっと理性が戻ってきたりするのに、
昨日はその感覚が全然なかった。
とろんとしたままで、
あれーおかしいなぁ、酔ってるなと自覚したくらいだから、
まだ吹っ飛んではいないのだろう。
この日記の半分くらいは、昨日書いているし。


食卓で、寺島に電話をした。
「着いたよー」




「今家の中?」

「ん」

「よかった」

「何で?」

「何でって。何かあったら嫌じゃんか」

「嘘ばっかし」

「嘘じゃないよ」




酔っぱらいというのは卑屈である。
それとも、あたしの元々が卑屈なのか。

阿比留さんだったらきっと送ってくれてたね?
二宮さんだったらどうだろ?

結局あたしは、根本的な部分で勝つことが出来てない。
これからも勝てない気がする…彼女らはあたしが持ってないものを持ってる。


「嘘吐き…」



そんな感情を勝手に声ににじませるあたしも、
相当ずるいんだと思う。










寺島が、
「いや、お前の気持ちもわからんではないから」
っていきなり言い出した。
想像してなかったセリフにきょとんとなる。

「何のこと?」

「ん、お前のいろいろな気持ち」

「え?気持ちって?どれよ?」

「だからいろいろだよ」



このあたしの何をわかってるって言うんだろう。
くるくるくるくる変わってるのに。
初めてそんなことを思った。
でも一種の被害妄想だとも思った。
多分あたしは、自分で思ってる以上にわかりやすいし、
寺島はそういうのを汲み取るのが得意な人だ。



「わかってもらえなくても大丈夫」


そのセリフが酔っぱらいの戯言だというのも。
きっと、バレバレだったんだろう。寺島には。





これから先寺島の心をつかむのは、他の人しかありえないって知ってるのに。
あたしのことを1番わかってるのは、寺島であってほしい。
そんな矛盾を、
あたしはいつまで抱えていくんだろう。
一種の馬鹿である。






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