「明日さ。
朝から映写会する?」
「明日は買い物に行かなきゃ。
夜はダメ?」
「ダメ」
「ごめんね」
「どこに買い物行くの?」
「アーケードだよ。
もうすぐイベントでしょ?」
「あぁ」
「お酒のやつ、買ってくるから」
あなたにあげるチョコはもう何個目かなぁ。 何だかんだで、 付き合って以来、別れてもあげてるよ。
結局のところ、突き詰めていけば、 テニスという大きいものがあるあなたには、 あたしは必要ないのだと思う。
たとえあたしがいなくなることで、何か失ったように感じても、 それをテニスで埋めれるくらい、 あなたのテニスへの思いは大きく、強い。
好きとか愛してるとか抜きに、 あたしはそれを心から羨ましく思う。 そんなものに出逢えた寺島を、 この人は幸せだなぁと思う。
あんなに好きだった、声楽の道を手放してしまったことを、 心から悔む。 あたしが主体性を失ったのは、 あれ以来のように思う。
主体性がないことを、ひしひしと最近感じる。 あたしの歌は、 これからずーっと、中途半端なのだ。
寺島がテニスを好きなほどに好きなものは、 今のあたしには寺島しかなくて、 なんだかそれが、悪くはないんだろうけど、 弱いのかなぁとか。 寺島は、傍に居ることを許してくれてるけど、 いつか離れる日が来るんだろうから、 そのときあたしはどうすんの?って、 寺島のテニスの話を聞きながら思った。
今日は寺島と壁打ちに行って、 そしたら寺島が古いボールを1個くれた。 色のくすんだ、少しだけ柔らかなボール。
こんなになるまで陽ちゃん、練習したんだなーと思うと、 また寺島が羨ましくなった。
大事にしよう。
もっと頑張る。
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