under one umbrella

2005年01月27日(木) 兄さんへ。2




ボク自身、
寺島を思いやれてる自信なんか、ないよ。
知らず知らず、傷つけてるのかもしれないし、
利用宣言でしょ?って聞いたことで、傷つけたのかもしれない。



けど、それに故意なんてカケラも無いよ。



傷つけたくない、
守りたい、
そう強く思って、ここまできたよ。


だから、寺島を傷つけた今井が大嫌いで、
今でもどうしても、許すことが出来ないよ。





そんなボクは、きっとそこかしこで見れるハズなんだよ。
ボクは元々、気持ちを隠すことが苦手だもの。
兄さんにもよく見破られて、
寺島も、見破る人だもの。






それなのに。
寺島はいとも簡単に、あたしを傷つけるの。





こんな風に感じる時点で、
もう愛じゃない。
自己愛という名のものよ。




ねぇ兄さん。
苦しい。



あたしは、たった1人の恋しい人さえも、
愛せない人間だったよ。



あたしが今まで言葉にしてきた「愛」は、
実は、こんなにうすっぺらかったの。





本当はそんなこと信じたくなくて、
「愛してる」って言葉は今でも自然に出るけど、
自分で自分が信じられないの。




傷つけられて「ばいばい」だなんて。
子供もいいとこ、でしょ?
最後まで、寺島を思いやれてないの。





兄さんは何度も、寺島のことを、

「自分勝手な奴だ」

と言ってたね。



「早く気づけ」

って、ボクに言ってくれた。





兄さんと同じことを思うボクも確かにいたけれど。
それでも、寺島が好きだった。
そう呟いたら、胸がきりっと痛んで、
涙がお湯に落ちるくらいに。




人生最大に好きだった。


少し天然の髪の毛も、
テニス焼けした肌も、
きれいに長い睫毛も、
芯の強さの見える瞳も、
柔らかい唇も、
火傷の痕の残った鎖骨も、
抱きつくと温かい首筋も、
付け根にマメの出来た指も、
厚い胸も、


そこに「寺島」という名前がつけば、
全てが好きだった。
全てが愛しかった。


逆に言えば、そこに別のどんな名前がついても、
あたしは満足出来なかった。
そんな自分を、痛いほど知ってた。







「ばいばい」って言ったことは、
正直、ちょっと後悔してる。

手を離されることは慣れてても、
離すことにはまだ慣れてない。



そして、思い違いだったら嫌だけど、
嘘をついたことは、
寺島の思いやりだったのかなぁとも思う。

「都合の良い女は嫌」
そう意思表示した、あたしに対して。



ねぇ兄さん、どっちだったのかな?
あたしは、寺島の思い通りになってしまったのかな?
それだったら、少し悔しいし、
また惚れ直してしまうけど。




どちらにせよ、あたしは、
また、歩いていかなきゃいけないんだよね。


新しいあたし。
そこに辿り着くまで。




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