under one umbrella

2005年01月15日(土) 「じゃ、ゆって」



「ねぇ、もっかいきーていい?」



「うん」



「あたしって、ほんとにかけがえない?」



「うん」



部屋で抱き締めてもらいながら。
酔っ払ってる自分を十分に自覚しながら。



「だいじ?」



「うん」



寺島が、いつものことって顔してる。
酔っ払うと、甘えた子になるあたし。
確信犯なのかは、微妙なところ。



いつもの如く、急に決まった飲み会。
しばらく盛り上がった後で、
藤原は、タバコを吸いに外に出ていた。
部屋に2人きりで、
いつも以上に酔っ払っていたあたしは、
お酒に任せて、いつも言いたかったことを言っていた。





「えっと………ともだちとか、うん、

なんでもいいんだけど、


すき?」



「うん」



「じゃ、ゆって」



「好き。」



なんだか、いつか言ってもらったときより、
あったかかった気がして。


きゅっ、っと寺島に抱きついた。


寺島の匂いは、昔と変わらない。
好き。



「ごめんね、陽ちゃん…」



弱いあたしを、許して。
いつも、平気だよって顔してるくせに、
こんな風にわがまま言わないと頑張れない、
意味わかんないあたしを許して。




「ごめんね」




あなたの前では泣かないって決めたのに、
わがままを聞いてくれた寺島を想ったら、涙が出た。
久しぶりに、寺島の腕の中で、泣いた。




「ごめんねぇ陽ちゃん」




わかってるんだ。
酔っ払ったあたしへの対応だ、ってことに。
わかってるくせに、言ってもらって、
支えにしたりして。
馬鹿でしょう?


わかってるんだよ。
やっぱりあなたには、あたしの心なんか要らないって。




「ごめん…」



寺島がちょっと力をこめて、抱き寄せてくれた。
いつか言ってたっけね。
『まりあの涙を見るくらいなら、抱き締める』って。
『見たくないから。それで止まるなら』って。



あの言葉で。
あたしは、何かを、諦めた。



「ごめんなさい…」



もっと強ければよかった。
嘘に近いとわかってても、その言葉が必要だなんて。


愛してなんか、いなければよかった。
あなたのためだけに、それを想う。
そうだったら、あなたはもっと、楽だったのに。
あたしのわがままを叶えてやったり、する必要なかったのに。




あたしのたくさんの、謝罪。
全部の意味は、伝わっていないだろうけど。


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