「ねぇ、もっかいきーていい?」
「うん」
「あたしって、ほんとにかけがえない?」
「うん」
部屋で抱き締めてもらいながら。 酔っ払ってる自分を十分に自覚しながら。
「だいじ?」
「うん」
寺島が、いつものことって顔してる。 酔っ払うと、甘えた子になるあたし。 確信犯なのかは、微妙なところ。
いつもの如く、急に決まった飲み会。 しばらく盛り上がった後で、 藤原は、タバコを吸いに外に出ていた。 部屋に2人きりで、 いつも以上に酔っ払っていたあたしは、 お酒に任せて、いつも言いたかったことを言っていた。
「えっと………ともだちとか、うん、
なんでもいいんだけど、
すき?」
「うん」
「じゃ、ゆって」
「好き。」
なんだか、いつか言ってもらったときより、 あったかかった気がして。
きゅっ、っと寺島に抱きついた。
寺島の匂いは、昔と変わらない。 好き。
「ごめんね、陽ちゃん…」
弱いあたしを、許して。 いつも、平気だよって顔してるくせに、 こんな風にわがまま言わないと頑張れない、 意味わかんないあたしを許して。
「ごめんね」
あなたの前では泣かないって決めたのに、 わがままを聞いてくれた寺島を想ったら、涙が出た。 久しぶりに、寺島の腕の中で、泣いた。
「ごめんねぇ陽ちゃん」
わかってるんだ。 酔っ払ったあたしへの対応だ、ってことに。 わかってるくせに、言ってもらって、 支えにしたりして。 馬鹿でしょう?
わかってるんだよ。 やっぱりあなたには、あたしの心なんか要らないって。
「ごめん…」
寺島がちょっと力をこめて、抱き寄せてくれた。 いつか言ってたっけね。 『まりあの涙を見るくらいなら、抱き締める』って。 『見たくないから。それで止まるなら』って。
あの言葉で。 あたしは、何かを、諦めた。
「ごめんなさい…」
もっと強ければよかった。 嘘に近いとわかってても、その言葉が必要だなんて。
愛してなんか、いなければよかった。 あなたのためだけに、それを想う。 そうだったら、あなたはもっと、楽だったのに。 あたしのわがままを叶えてやったり、する必要なかったのに。
あたしのたくさんの、謝罪。 全部の意味は、伝わっていないだろうけど。
|