under one umbrella

2004年10月05日(火) なんだかんだで


恋愛感情さえなければ、一緒にいて楽しい。
彼女なんか要らないと、寺島は笑った。
あたしもきっと。
恋愛感情がないからこそ、竜崎君や藤原と笑っていられるのだろう。


高校のときの友達に、
「あたし、寺島君と純ちゃんには、友達でいてほしかったな…」
と言われたことがある。
今のあたしにこそ、響いてくるセリフだ。
本当。
あのときのように我慢をして、笑えばよかった。


今、寺島と普通の友達のように電話をしたり、
CDショップに行ったり。
穏やかに過ごして、そしてそんな時間を、
寺島がまた作ろうとしてくれる。
恋愛抜きなら、あたし達は、こんなに上手くいく。
お互いに優しくなれる。
それが一番だ。





中学3年の、きっと今頃だっただろう。
寺島のクラスに入り浸って、仲良くしていた。
当時の寺島は、今井に惚れていることがまるわかりで。
絶好のからかいのネタ。
毎日笑って、過ごしてた。
からかう度に、少しずつ大きくなる胸の痛みは、見ないふりをしてた。


あるとき、どうしようもなくなってきたから、
寺島に電話をかけた。



「今まであんたごまかしてたけどさ、なんだかんだで、
今井のこと好きなんでしょう?」



開口一番のこのセリフは、
かなり寺島の不意をつけたようで。
少しどぎまぎした様子を見せた後、寺島は、



「好きだよ」



と答えた。



その響きを悲しむ間もなく、あたしは笑わなければならなかった。
嗚咽なんて聞かせたら、この人を失う。
それしか考えてなかった。
…やっぱり、中3のときから変わってないなぁ。


少し今井の話をした後、
「じゃぁ私は失恋ね」
と明るく言って、
更に呆然とする寺島をまた笑って、電話を切った。
次の日から、同じ毎日を過ごした。




どうしてあの頃のあたしは、今より強いんだろう。
今よりきれいな笑顔で、寺島に笑いかけられるのだろう。
今のあたしが笑っても、見る人が見れば翳っているのだ。


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