「ケリはつけた」 と、寺島は言った。 あたしを抱いた後、 帰り際、玄関先で。
あの日あたしを押し倒し、嫌われることで。 ケリをつけようとしたのだと言った。 そして、 ついたと。
だから、 「今引き止めたくもないし、 嫉妬とか、嫉妬させようとか、そういうことも思わない」 と、言った。
割り切れたということ。 あたしを完全に、体だけの関係として。
その日あたしを誘ったときの、甘い目を思い出していた。 抱き締める腕も覚えていた。 見つめられて途惑ったこと。 相変わらず、胸の中は暖かかったこと。 信じちゃいけないのを知っていながら、 信じずにはいられなかったこと。
思い出しながら、けれどさっぱりした頭で、受け止めた。 そうか。 それならあたしも、ケリをつけなければいけないね。
もう2度と、あなたを求めてはいけないということだね。
「君が求めるものは、あげられない。」
そうはっきり、あなたも言った。
うん。 けれど、あなたがいつかまた私の体を求めてくることも知ってるから。 そのときちゃんと応えられるように、 整理をつけておくね。 悲しくならないように。泣きたくならないように。 応えたいと思う心だけ、残しておくから。
愛していることを、思い出してしまうから。
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