under one umbrella

2004年08月26日(木) こんな状況なのに


不意に、寺島が唇を押しつけた。


「どうだよ?嫌いな奴にキスされて」


驚きながら、悲しみながら、
心のどこかでときめいているあたしがいた。
けれどそんな答えは、今この人は求めていない。


「全然ときめかない」


言い終わった瞬間、またキス。
離れても、寺島は、
遊ぶように唇をつけていた。






「あたしに嫌われたら、陽ちゃんは幸せ?」


寺島の頬に触れた。
こんな状況なのに、あたしは、
前と変わらずに、寺島が愛しくて。


あたしの問いに、寺島は間を置いて答えた。

「…うん」


「なら、なるから。
 陽ちゃんが幸せになるなら、あたし何でもするから。
 何でもいいから」


寺島はまた、何にも言わなかった。
あたしも、それ以上言わなかった。



階段を上ってくる音がして、
上ってきた藤原達が、ドアを開けた。
急いで離れて、あたしは涙を拭いた。


そして、
何事もなかったように、藤原達と話し始めて。
何も変わらない顔で、お酒を飲んだ。


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