1人じゃないことを知っていることで生きているあたしの弱点は、 そのことをどうしても信じられないような日に出逢うこと。
そんな日だってあると割り切るまでに、 一体どれだけの迷惑を、寺島にかけるんだろう。 孤独を感じる日はどうしても。 この人に、傍にいて欲しくなる。 全てが昔のままのこの人じゃないことは、関係ない。
電話で、際限ない愚痴を聞かせてしまいながら。 こんなのうざすぎる、って思いながら。 それでも止まらなくて。 否定されても、叱られてもよかった。 でもそういうのが、1番うざい。 寺島を支えられなかったときより、消えて無くなりたかった。
冷静に答える寺島の声が、余計にそう感じさせた。 そう、その通りなの。 大吉の日ばかりだったら、そのうち箱の中から大吉が無くなっちゃう。 こんなに簡単に片づけられるのに。 何であたしは、まだそれを教えてくれる人が必要なんだろう。
知らないわけじゃないの。 今までも何度も、辛い日はあった。 でもちゃんとまた、幸せな日はやってきた。 わかってる。 全ては一時の感情で。 生きていれば、また全てがめぐってくること。
寺島は、あたしの愚痴を全部聞いてくれて。 とりとめのないことも聞いてくれて。 言葉もちゃんと、くれて。 けど、たった一つ。 けど、あたしが一番欲しかった答えは、 当たり前だけど、くれなかった。 それに対して、 孤独を感じたり、やっぱりとも思ったり、 悲しかったり、馬鹿らしかったり。
でも悲しくて、涙が出た。
何もしたくなかった。 全て放棄して。全て消し去ってしまいたかった。 あたしとはつまるところ何のために生きているのか。 何のために今日という日を過ごしたのか、わからなくて。 ちょっとだけ、寺島の5月病を理解できる気がした。
寺島は、「張り合い」と「刺激」に飢えてそうなると言った。 あたしはきっと、恋「愛」と「信頼」に飢えてそうなるんだと思った。 理由が違うから、何も、解決してあげられないけれど。
この状態が毎日続くなら、そりゃ人も変わる、と思った。
寺島が、あたしの友達を紹介しろってずっと言ってて。 そのことにあたしが凹むと、何かおかしい空気が流れる。 それは当たり前すぎて、自分で自分が信じられなくなる。 寺島と楽しく過ごすことが第一なのに。 怖いって気持ちが、先行する。
とても矛盾してる。 寺島が潤ってくれればそれでいいとか書きながら、 やっぱり傍にいたい。
あたしが今、寺島が必要とする何かを補ってあげられてるとしたとき。 それは他の誰かでも、足りるんじゃないかって。 むしろその友達なら、有り余っちゃうくらい、 寺島を満たせるんじゃないかって、思うから。
それ程魅力ある子だから、あたしも大好きな子なんだけれど。
だって、あたしにしか出来ないことなんて、ない。 あたしにしかないものは、あるかもしれない。 けど、あたしが寺島にしてあげてることと考えたら。 自信はアリ程も、ない。
その子を紹介した途端、ぽいってされそうで怖かった。 だからこそ、本当に紹介しようって思ったとき、(結局勇気がなかったけれど) 代りにあたしは縁を切ろうって思ったんだ。 言われるより、自分が言った方が楽だから。
あたしは本当に、 寺島の傍にいちゃいけない女に近づいている。 そう実感すると、頑張らなきゃって思う。 じゃないとこの先、誰の傍にも、いられない。
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