今日、今井から聞いた。 今井が、あたしと寺島の関係を幸子に話したとき、 幸子はキレたんだって。 それは、幸子が地元に帰ってくる、少し前のことらしい。
やっぱりなぁ、と思いつつも寂しかったり、 あたしの前では、キレてる様子はなかったのに、と思ったり、 でもそれは、 前川のことを一切言わなかった幸子なんだなぁと思ったり。
今日は雨だったから、家に寺島が来てくれた。 あたしより早く帰って来ていたから、迎えにも来てくれた。
家への道を歩きながら、たくさん話した。 部屋で、たくさんのキスをした。 寺島に電話がかかってきて、それが長くて、 あたしがふてくされると、寺島は慌てて頭を撫でてくれた。 手を握っていてくれた。 会話に出てきた女の子の名前を尋ねると、ちゃんと説明してくれた。
抱いてくれた。 抱き締めてくれた。 「好き」って言ったら、キスしてくれた。 たくさん、甘えさせてくれた。 甘えてもくれた。
帰り道、手をつないでいてくれた。 次の約束も、してくれた。
ごめんね、幸子。 例え、あたしを「彼女」にしてくれなくても。 こんなにも喜びを与えてくれる人に、 今、これ以上のことを要求するなんて出来ない。 ましてや、この人にはあたし以外の女はいない。
そして、夕べの電話で寺島が言ってくれた、 「好きだ」って言葉も、忘れられない。
差別されていたこと。 あだ名をつけられたこと。 そのことも勿論、傷になって残っている。 だけど、だからこそ、 あたしを好きだと言ってくれる寺島が大事だ。 それは今だけのことと言うなら、 続くように努力をしたいと思う。 寺島が好きだから。
「付き合う意味がわからない」なんて、 ただ逃げているだけだと思うかもしれない。 寺島と別れた帰り道、 間違っているのかもしれない、と思った。 だけど、 じゃあ「付き合っている」ならば正しい道? あなたは許してくれる? 祝福してくれる? そうでもないんでしょう。
何度となく同じことを繰り返してきたあたし達。 だけどその度に、傷は広がって。 今はお互いに、その道を選べぬほどに。 繰り返すことが、怖くて。
それでも、一緒にいたい。 だから。
ごめんなさい、幸子。 寺島を捨ててあなたを選ぶなんて、出来ない。 今のあたし達には、これしかない。
でもあたしは努力をする。 決して、これで満足はしない。 ちゃんと歩いてゆくから。 見てて欲しい。
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