幸子の話を書きながら、思い出した。 あれはいつだったかな。 高校生のとき。 寺島とまだ付き合ってもなかったとき。
寺島と、帰り道に偶然会って。 分かれ道で、喋っていたとき。 寺島の高校の、同じ中学の男子達の話になった。 私のことを、嫌いな。
その人達は、中身もだろうけど、 私の外見を主に嫌ってる人達だった。 私もその人達の、外見で判断するところが嫌いだったし、 中学3年生のときにその中の1人が、 授業中漫画を読んでいるところを私に見つかって、 先生に告げ口されたことを根に持っているという、 くだらない性質も嫌いだった。
寺島は、どちらかというと、その人達と仲は良かった。 けど、私とも仲良くしてくれて。 いくら小学生のときからの知り合いだからって。 周りがああだったら。 同じようになってもおかしくないのに。
「寺島は、あの人達みたいにしないね?何で?」
それは、あの人達が嫌うように、 私は外見がよくないのに、という意味だった。
寺島は、少しためらって、
私が今、寺島をはねつけられないのは、 こういった過去が作ってきた寺島への信頼だと思う。 数えてしまえば少ないけれど、 私の中に、深く残るものばかりで。 それこそ、私をそのまま受け入れてくれた人だから。
寺島のその言葉の後、何て答えたか覚えてない。 嬉しくて、泣きながら帰ったことは覚えてる。
もし言ってなかったら困るから、今ここで。 寺島、ありがとう。 あたしを救ってくれて。
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