そういう意味では。 私はきっと、男の人に恵まれていたんだろう。 小田も、寺島も。 私の気持ちをちゃんと受け止めてくれたうえで、フッてくれた。
「好き」という気持ちを、 外見という理由で真っ向から否定されたことは、なかった。
だからむしろ、この外見のままでは寺島に申し訳なくて、 茶原にダイエットを勧められたときも、不思議には思わなかった。 寺島が外見で判断する人だとは思っていないけれど、 少しでも、寺島の「可愛い」に近づきたいと思う。
そんな私に、幸子は、 「外見で態度が変わるような人はダメだよ」 と言う。
幸子の頭にはきっと、 前川や、差別をした男子のことが思い浮かぶのだろうと思う。 そうじゃなくても、 外見で判断する男の人というのは、私だって嫌だ。
要するに幸子は、 「外見も含めた、ありのままの自分」 を好きになってくれる人がいいのだと言っているのだと思う。
だけど、 ぶっちゃけた話、今の外見を好きになってくれる誰かがいる、 と思っているところがわからない。 それは結局、自分を可愛いと思っているんじゃないかと思う。 思っていないのなら、努力をするはずだ。
中身が外見をつくる。 そんな風にも思う。 だから、努力をしたい。
寺島に甘えたままは嫌なのだ。 本当の意味で「可愛い」と思われたいと思う。
でもそんなにまで寺島を好きだということを、どう伝えればいいのだろう? 好きなことはわかってる、と言われればそれまでで。 今まで散々勝手を言ってきた寺島をどうして、と聞かれることもわかっていて。 それは、いつも繰り返していたことだったけれど。 もうここまでくると、意味が無い応酬に思えた。
経験や、育ってきた環境や、友達が違うから。 考え方が違うのは、どうしようもないことで。 他人だから、その更に他人を想う気持ちが判るわけもなくて。
私と幸子はこれまでだな、と思った。 好きな人に好きと言ってもらえるように、と思う私と、 ありのままの自分を好きになってもらおうとする幸子。 どっちもどっちだと思うから。
寺島との関係を聞いて、幸子は、 私との間に壁が出来た、と言った。 寺島への気持ちは、どうしても判ってもらえないらしい。 判れ、というんじゃなく、 好きなんだねー、と、認めてもらえたら、と思っていたんだけれど。
親友である資格などない。 所詮は、そんな女だ。
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