幸子とのすれ違いを感じたことは、もう一つあった。 それは、「外見」のこと。
ぶっちゃけた話、私も幸子も、外見がよくない。 中学校の頃、男子に差別されたりしていた。 中には、女子もいた。 変なあだ名もつけられてた。
私には、寺島がいた。茶原がいた。 部活の友達や、クラスの女友達がいたから、 ほっとけた。
幸子にいなかったわけじゃない。 友達は私より多かったと思うし、男友達も、いた。 でも、私より傷が深かった。
多分、彼女にあって私にない、体験があるからだと思う。
中学2年のとき。 幸子には、3年想った人がいた。 名前を前川という。
前川は背が小さくて、「可愛い」タイプの男だった。 バカだけど、それをしゃべりの面白さでカバーしていた。 いつも周りに人がいて、笑い声を響かせていた。
幸子は、小学生の頃から彼を好きだった。 同じクラスで、仲が良かったと言っていた。
チビなのにバスケ部で、毎日学校の周りを走っていた。 それを楽器片手に、4階の窓から2人で見下ろしていた。 「可愛い♪」 と幸子は、笑顔だった。
けれど私は、心から応援することは出来なかった。 前川を含む男子のグループが、幸子にあだ名をつけていることを知っていたから。 だから前川を、人間的に好きになれなかった。
私が前川を好まないのを、幸子は知っていたのかもしれない。 バレンタインに告白することを、教えてくれなかった。 その結果も、教えてくれなかった。 友達が教えてくれるまで、私は知らなかった。
前川のことは、今でも許せない。
幸子は、私に何も言わなかった。 泣きもしなかった。
泣けもしなかったのかも、しれない。
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