夜9時の、チャイム。 いつかの私だったら、真っ先に寺島を思い出してた。 けど、その時の私はさすがに忘れていた。 寺島が9時に来ていたのは、いつ頃だったかな。 まだ高校生だった。
弟が出て、呼びにきた。 また私は、嘘ついてんじゃないかと思った。 でも嘘じゃなかった。
3週間ぶりの寺島が、そこに、居た。
何かあったのかと思った。 よっぽどのことがあったんだろうって思った。 だから、 「どうしたの?」 って聞いた。 寺島は、少し驚いた様子だった。 「今から俺は帰って、飯を食うけど。 その後、お酒飲みに来て良い?」 話があるんだなって思った。 「いいよ」
「どう?大学慣れた?」 「うん、まぁまぁ。明日からキャンプ」 「へぇ」 そんな会話を、机越しに、酒を飲みながら。
それは、ある意味シカトされ、ある意味叶った。
|