under one umbrella

2003年10月28日(火) そしてそのままキスをした。

「また送ってくれるの?」
「ああ。これが最後だろうからな」
「こないだもそんなこと言ってたよ」
「そうだっけ」
やっぱり最後じゃなかったね。
当たり前だけど、と思う反面、なんだか安心する。
宮島や、竜崎君や、寺島や市丸を失うこと。
もしかしたら、恋を亡くすより怖いかもしれない。
恋を亡くしたとき、支えてくれたのはこの人達だったし、
これからもきっとそうだろうから。


「戻るよ、絶対」
「戻んないよ」
「戻るって」
「戻んない」
「『2度あることは3度ある』って言うだろ?」
「別れるの3回目なんだけど?」
「…」
「だからもうさすがに終わり。どう頑張っても戻らないって」
戻りたくても今は無理。
受験が大きすぎるから。
「受験が終わったら戻れるかも、なんて期待もしたくない。
外れることわかってんだから、無駄だよ」
「あ、わかった」
「え?」
「『7転び8起き』だ!」
「…υ」
何でそんなに戻ってほしいんだろう。
そう聞いても、宮島はのらりくらりとかわすばかりで答えない。
戻ることなんて、もうないのに。

その日の宮島は、遅くまで喋ってくれた。
「え?宮島君コーヒー飲めないの?」
「うん」
「じゃ何が好きなの?」
「ハンバーグとステーキ」
意外と子供っぽい宮島が可愛い。
付き合いは長いのに、そんな話をするのは初めてだった。
「偏食だね。大きくなれないよ」
「俺はずっと少年さ」
寺島は好き嫌いはなかったな。
あえて言うならそう、チョコレートが好きで。
ポッキーをあげたら、嬉しそうに食べていた。
ああそうだ。あれは冬季限定のポッキーだった。
最後の1本で、寺島がポッキーゲームを仕掛けてきたっけ。
そしてそのままキスをした。
ココアパウダーの味がして、あたしは──

そこで意識が戻った。
宮島が、学校の同級生の話をしていた。

…あれ?



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