やっと、落ち着くことが出来た。
この6月、寺島は毎週、家に来た。 先週は、テスト期間だから来ないだろうと思っていて、弟が、 「姉ちゃーん。寺島先輩が来たよぅー」と呼びかけるのを、 本気で弟の嫌がらせだと思って(前例があったし)、「嘘でしょー」と返事したっきり、 5分程何もしなかった。 そうしたら本当に来ていて、部屋に来て、「今晩は」なんて言う。 「テスト前なのに…」って言ったら、 「そうなんだよねぇ、そんな時期にばっかり来ちゃうんだよねぇ」なんて、わけのわからないことを言ってた。 いつものことだから、もういいけれど。
先々週だったか、コトの後で乱れた髪を、あたしが梳いていたら、 あたしの手から櫛を取って、寺島が梳き始めた。 そんなことは1年2ヶ月の中には、なかった。 あたしの髪は長くて多いから、少し遅く時間が流れる。 ゆったりとした時間の中で、あたしは何となくだけれど、幸せだと思った。 以前のあたしなら、ボロ泣きだったのだろうけど、今はそこまではないらしい。 でも嬉しかった。 そう感じた。
今は「別れた恋人」のはずなのに(付き合ってはいないという意味で)、 付き合っていた頃よりも、寺島が優しいような気がする。 付き合っていた頃にはなかったことが、少しずつ増え始めて。 でもそれは確実に、これまで以上に幸せなことで。 ちょっと途惑うけれど、嬉しい。 そんな日々が続いている。
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