under one umbrella

2003年06月12日(木) 「逢いたい」



別れる直前から、あたしは、その人から本を借りていた。
例の、その人が大好きな小説。
別れてからも借り続けて、読んでいた。


最初は開くことすらできなかったそれも、だいぶ読めるようになっていた。
そのことはつらかったけれど、本を読めること自体は、少しでも別世界へ行けるから、
気がまぎれて、ちょうどよかった。


「さよならメール」を送ってから初めて、会うことになった。
その本を返し、さらに貸してもらうために。
他の目的もないわけじゃなかったけど、それは別れた後の残務処理みたいなもんで、
戻りたかったとかそんなんじゃない。
そう言いたくなる衝動が起こらない自信も、あった。


会いたくないというわけでもない。そりゃ、まだ好きだし会いたい。
だけど自分の中で、付き合ってた頃の「逢いたい」よりは、純粋な気持ちのような気がした。
何も期待していなかったから。
今は、「元恋人」として彼を好きなんじゃなくて、ある意味では友達に近い気持ちで、
「彼」という人間が好き。だから会って、いろんな話をしたい。
そんな感じだった。




前日、あたしは突然発熱した。
当日になっても、下がらなかった。
一応そのことは伝えてはいたけど、あたしは、約束を破りたくなかった。
熱はあっても、頭痛やめまいは治っていたから、
母に許可をもらって、その人を待った。
会うのは、その人の塾のついでだから。塾からの帰り道で待ってればいい。


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あたしには絶対、真似できないこと。



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