次の日、ずっと考えていた。
どうしてキスなんかしちゃったんだろう。 これ以上、あの人を束縛していてはいけない。 もう、昨日みたいなことをしてはいけない。 いいかげんにさよならをしなきゃ。 恋人のあの人は失ったけど、友達のあの人がいるなら十分。 自分でも不思議なくらい、自然にそう思えた。 思えるうちに、伝えておこうと思った。
本当なら、2週間前にそうするべきで。 原因は明白なんだから、悪あがきなんて、しちゃいけなかった。 おかげで余計にこじれて。お互い傷ついて。 これ以上悪くはなりたくないから。傷つけたくないから。 でもまた会ったら、あたしはきっと、失うことがまた怖くなる。 だからメールで。 ちょっと、長くなってしまうけど。
そんな想いをこめたメールは、正常に送信された。 涙は止まらなかったけど、どうしようもできない程じゃなくて。 残った思い出で。十分生きていけるような気がした。 その後のやり取りも、至って平和で。 あたしはだんだん、本当に少しずつだけど、元気になり始めた。
あたしにとって、彼との関係が平和であるということは、かなりの影響力があるらしい。 それは、恋人であったときは勿論だけれど、 その前の友達5年間でも、そうであった気がする。 どうあろうとも、あたしには彼が必要らしかった。
そう気づいたとき、「恋人」という言葉に執着していた自分が馬鹿らしくなった。 「恋人」じゃなくてもいいんだ。 あたしの世界に彼が存在するように、 彼の世界にあたしが存在しているのならそれでいい。
ああこんな、穏やかな気持ちは久しぶり。
ごくごく一部の、意味だけど。
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