その後のメールでは、それ以上の存在として扱われることはなかった。 あたしが真剣に話そうとしても…のらりくらりとした返事しか返ってこない。
「奴隷が出来たから、嬉しい」とか、「容赦なく使うから、覚悟しとけよ」とか…。 今までとは違いすぎる、言葉の羅列。 正直言うと、傷ついていた。 友達にもたくさん怒られた。 「そんな奴とは別れろ」と、皆言った。 自分の選んだ道が間違っていたことも、本当は理解っていた。 失うことが、怖かっただけだった。
あの人は本当は、そんな人じゃない。 「そんな人」になってしまったのなら、それはあたしの責任だ。 あたしを傷つけることで、あの人が元の人格に戻るのなら、いくら傷つけられたっていい。 今のあの人を見るのは、嫌だ。
その理屈は、彼があたしのことを、多少なりとも大事に思ってくれていなければ成立しない。 気づいたのは、もう少し後だった。 それでもやっぱり、失いたくなかった。
「奴隷」扱いされて、確かに傷ついたけれど、 あたしはどこかで、安心していたようなふしがある。 多分、無理して前に進まなくてもいいと思えたからだ。 今とりあえずは、この人を失うことはないんだと思えたからだ。 結局あたしは、そこに戻ってきてしまう。 馬鹿だ。 もう既に、失っているのに。
「奴隷」になってから、初めて会う日。 信じてはいたけど、少し緊張した。 あたしが信じているあの人など、もう存在しないのかもしれなかった。
気が抜けた。
|