風太郎ワールド


2003年06月17日(火) 千人祈

昨日の「クローズアップ現代」で、「ことばで綴る千羽鶴」と題されたウェブサイトのことが紹介されていた。イラク戦争開始直後に20代の若者達が立ち上げた。

「何もできないからこそ、せめて声を上げませんか?」イラク戦争について感じた素直な気持ちを短い詩の形で募集したところ、20代の若者達を中心に5千を超えるメッセージが寄せられた。

「どっちがいい、どっちが悪いではなくて、戦争自体がいやだなっていう‥‥思いをダイレクトに書ける、‥‥そういう場所を作ろう。そういう言葉が集まった時に‥‥、何かが変わるキッカケになるかも知れない」発起人の西澤直純さんは言う。

戦争が進むにつれ、寄せられるメッセージには懐疑的な声も混じるようになり、ブッシュの終戦宣言をもってサイトは閉じられた。

しかし、この時の素直な気持ちを記録に残しておこうと、サイト運営者達は、寄せられたメッセージを本にまとめた。タイトルは『千人祈』。

在米の日本人留学生もメッセージを寄せた。

後ろの席の彼は
バグダッド出身。
「家族はどうしているの?」
と白人の教授が聞いた。
「…みんな、
バグダッドにいます。
もう、電話も通じないけど。」
クラスのみんな、下を向いた。
誰も、何も言えなかった。
言えるはずもない。
その日の新聞の見出しは、
「バグダッドまであと50マイル」
投稿者の最年少は、小学5年生の少年。
同じ地球に同じ時に
生まれてきた人間同士が、
なんで殺し合わなくちゃ
いけないの?
この少年は、自分が使っていたサッカー用具をイラクの少年達に送ろうとしている。彼は2年前におばあさんからもらった手紙が心に残っていた。9才の時に終戦を迎えたおばあさんは、戦争の悲惨さを伝えるために自分の体験を手紙に書いて、この少年が9才になった時に渡した。自分のおじさんが特攻隊で死んだことなどを綴った。

この本の収益は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に寄付されることになっているという。

*    *    *

日本では最近、少年犯罪をはじめ若者に否定的な報道が多いが、一方で、こんなに素晴らしい若者達がいる。

さらに、戦争の体験を次世代に伝えることを自分の責務と考えるおばあさんもいる。まだまだ日本は捨てたものじゃない。

こうした若者達の多くは、イラク戦争の現実を目の当たりにして無力感に襲われているかも知れない。そんなことをやっても無駄だと訳知り顔で嘲笑する大人達もいるかも知れない。

そんな若者達に伝えたい。君達は正しい。決して負けるな!挫けるな!納得がいかない大人の話に盲従する必要はない。理想を捨てずに突き進んでいけば、きっといつか君達の勇気が報われる時が来る。

ただ、君達にはまだ力がない。正義感はあっても、気持ちだけが走っている。だから、もっと知識を吸収し、知恵を身につけ、経験を積み、歴史を学び、自分に力をつけ、そして正義を実現して欲しい。世界を良くするために貢献して欲しい。

「何故」をもう一歩進めなくてはならない。「戦争反対」と唱えるだけではなく、どうしたら社会を変革できるのか?どうしたら理想を実現できるのか?悪をなくすにはどうすればいいのか?それは本当に悪なのか?悪とは何か?

すべてを一度に変えることはできなくても、きっと小さな変化を生み出すことはできるはずだ。変革は常に小さな変化から始まる。

頑張れ、日本の若者達!




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