風太郎ワールド
ニシタマオ氏を巡る戦いが、あつい。
「ややっ?タマちゃんを捕獲しようとしているぞ!何をしているんだ、バカヤロー!」 タマちゃんを見守る会のメンバーが罵る。
「このままじゃ衰弱して死んでしまうかもしれないんですよ。可哀想じゃないですか?」 タマちゃんを思う会のメンバーが応戦する。
「でも、タマちゃんはあんなに栄養状態が良いじゃないか、バカヤロー!」 ――見守る会。
「アゴヒゲアザラシは、集団で生活するので、単独でいるのは自然じゃない。自然に帰してあげるべきだ」 ――思う会。
「タマちゃんは、ここが気に入っているんじゃないか。勝手に連れて行くなんて、ひどいじゃないか。バカヤロー!」
それを無視して、見守る会がエサを与える。
「オイ、勝手にエサをやるな、バカヤロー!」
「エサをやるのは法律違反じゃないですから」 無視して、続ける、動物愛護団体のメンバー。
「やめてください」 実力行使で止めにはいる、お役人。
いやはや、アゴヒゲアザラシごときで、なんでこんなに騒ぐのかといいながら、こっそり面白がっているのは、私ひとりだけではあるまい。
それにしても、もし「真実」がたった一つであれば、世の中争いも少なく、「バカヤロー」の連呼もなくなるだろうに。
単純に考えればそう思うのだが、実際には、全く同じ事実を目の前にしても、立場変われば、見方も変わる。
* * * 今、世界では、これと似たような議論が繰り広げられている。いや、もう議論は終わったのかもしれない。戦争は、既定事項。秒読み段階へ入ったようだ。
イラク vs アメリカ。
アメリカが主張するように、イラクのフセイン政権が、国連の決議に違反しつづけているのは事実だ。きっと大量破壊兵器も持っているだろう。クルド人も虐殺した。クウェートにも侵略した。テロとも何らかの繋がりがあるだろう。
という疑問は消えない。
イスラム世界から聞こえてくる不満に頷くことも多い。アメリカはイスラエルに味方し、パレスチナはじめイスラム諸国に対して不公平だ。そもそもイラクに大量の武器を与え、オサマ・ビンラディンに軍事訓練を与えたのは、アメリカだ。アメリカ流「正義」、アメリカ流「民主主義」、アメリカ流「ビジネス」を押しつけて、イスラムに対して十分な敬意を払っていない。
同じ事実を積み上げても、そこから出てくる結論がまったく違う。議論が噛み合わない。お互いに相手の主張が間違っていると思っている。正義は自分の側にあると信じている。
何故、こういうことがしばしば起こるのか?
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