NORI-☆
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黒い影(2)
昨日、サトシが保育園からザリガニを一匹持ち帰った。 クラスのみんなで近所の川に釣りに行ってきたらしい。 この手のいわば男の子系のイベントには いつもあまりのらないサトシが、 「サトも一匹釣ったんだよっ!」と嬉しそうに言うので、 「よかったら家に持ち帰って飼ってください」 という先生からのメッセージを素直に受けることにしたのだ。 「ちゃんと自分でお世話できる?」 「うん!」 「朝早起きしてエサあげたりするんだよ?」 「うん!」 「ザリガニって何食べるの?」 「かつおぶしっ!」 「ほんと?」 「うん、今日はかつおぶしあげたよ」 実はママはあんまり動物が得意ではないので、 ちょっとなぁ…と思ったけれど、 ザリガニならそんなに手がかからないだろうし、 そんなに大きく育つこともないだろうから、 まあいいか、と思った。 サトが責任をもって世話をするというものも、 そろそろ何か一つあってもいいかもしれないし。 大きな箱の底に2匹残っていたうちの1匹を 砂場用のスコップですくい上げ、 用意されていた“お持ち帰り用“の牛乳パックに 慎重に移すサトシの目はキラキラと輝いている。 うん、やっぱり許可してよかったかも(^^) 家に帰ってから図鑑を見て、 「ザリガニの飼い方」を調べる。 なるほど、水槽に砂や砂利を敷いて水を入れ、 上れるくらいの大きさの石を入れるのね…ふむふむ… 「水槽買わなくっちゃね」 「うんっ!」 とりあえず、牛乳パックでは窮屈だろうと思って、 25センチ角、深さ7センチくらいのクッキーの缶を空け、 そこにザリガニを移した。 缶の内側が金色に光っているせいか、 それとも新しい環境におびえているせいか、 ザリガニは隅っこにぴったり寄って動かない。 ときどき覗き込むと、 ビクッと身じろぎするのがなんだか気の毒だ。 休ませてあげよう、と出窓に置いて、 ロールスクリーンを下ろして電気を消した。 サトシはよほど嬉しかったのか、 布団に入ってから30分くらいしてパパが帰ってくると、 ムクッと起き上がって出て行き、 「ザリガニがいるの! 案内するから見て!」 とパパの手を引っ張って出窓に連れて行っていた。 そして朝。 一番最初に起きたママが、 ザリガニのご機嫌伺いに出窓に寄って行った。 「い、いないっ!!!」 缶の中にはけっこうたくさん糞が残っていたが、 ザリガニの姿はどこにもない。 出て行ったなら水の跡が残っているのでは、と 見回したけれど、どこにも痕跡はない。 もちろん、まわりを見回したが見当たらない。 「パパ、大変っ!ザリガニが脱走したっ!」 「サト、起きてっ!ザリガニがいないよ!」 二人が起きてきて交互にクッキー缶を覗き込む。 「ま、うちの中にいることは間違いないから、 そのうち見つかるよ」とパパ。 「せっかくサトがつれてきてあげたのにねぇ」とサト。 なんか妙にのんびりしているのは、寝起きのせい? おもちゃが散乱している家の中、 下手な場所にいられると、気づかず踏んでしまったり、 ヨシキがうっかり触って噛まれたりするかもしれないのに… ママはけっこう焦っている。 早く見つけなければ…でも、いったいどこに?? 「どのみち部屋の真中にはいないだろ。 壁際とか家具の下とかをときどき見とけば…」 うーん…そういうもんかなぁ… でもまあ、ざっと探していないものはしょうがない。 そのうち見つかるのを待つしかないよね。 あきらめて通常の朝モードに戻る。 子供たちに着替えをさせて、食事を出して、 食事を食べさせながらノートを書いて、 通園バッグの中身を整え…… いつものようにばたばたと動き回って、 リビングと隣の和室の間を行き来しているとき、 ふと気配を感じて振り返った。 リビングの隅にあるおもちゃ箱。 乗り物のおもちゃがまとまって収納されている フリーボックスの前に、 なにやら細長い黒い影が…… こ、これは……! 刺激しないようにそーっと回り込み、 洗面所のパパのところに行く。 「パパ、いたっ!ザリガニがいた!」 なんだか夕べより一回り大きく、 身体が黒っぽくなっているのは気のせいだろうか? 昨日よりちょっと動きも速くなって、 捕まえようとするパパの手を振り切って逃げようとする。 でも、ついに御用となって、 今度はクッキー缶の3倍くらい深さのあるバケツに安置された。 身体にかぶるくらい水を入れ、 休憩所(?)として石を一つ入れてやる。 「これで大丈夫かな?」とまだ疑っているママに、 「今日水槽買ってくるよ」とパパ。 「エサあげよう!かつおぶし!」と張り切るサト。 うーん…なんか前途多難なザリガニ飼育のスタートである。 それにしても、パパのいるうちにザリガニが見つかって ほんとうによかった………(^^;) ママはやっぱり節足類は苦手である。
2001年05月31日(木)
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