NORI-☆
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黒い影
保育園ファミリーの朝は忙しい。 なかなか目が覚めないサトシを布団から引きずり出し、 足元にまつわりついては 隙あらば抱っこしてもらおうとするヨシキをかわし、 子供たちの着替えと朝食を用意する。 「早く着替えなさい!」 「お熱測るからちょっといらっしゃい!」 「おしっこ?トイレ早く行きなさいって!」 「よしくん、今ご飯出すからちょっと待って」 「きゃ〜!エプロンしてから食べてぇ〜」 「サト、いつまで裸でいるの?ご飯だよっ」 朝のママはガミガミである。 子供たちがやっとそろって食卓に着くと とりあえず一安心。その傍らでコーヒーを飲みながら 保育園の連絡ノートを書く。 (夜のうちに書いておけばいいと思うけど、 どうせ朝の様子も書くのだし…と結局朝に回している。 二人分だとけっこう大変。 しかもママは文章がいつも長い(^^;)) しかし静かなのは一瞬で、また不穏な空気… 「よしくん、コップにご飯入れないでっ!」 「サト、お口が空っぽ!おかずも食べなさい」 「あ、こら!ポイしないの〜!!」 子供たちにまともに食事をさせるのは大変である。 さらに、そんな彼らを横目で見ながら、 保育園用の衣類やオムツ、タオルなどを準備する。 パパは食事の間にみんなの布団をたたみ身支度を整える。 パパの準備完了が出発のタイミングになるので、 子供たちはそれまでに食事を終えないといけない。 ヨシキはともかく、サトシがなかなか食べ終わらないので 叱ったりすかしたりしながらなんとか食べさせ、 見極めをつけて切り上げさせる。(完食はあまりない) 二人が食卓を降りると、今度はお出かけの支度。 靴下やジャケットをつけさせ、玄関へ追い立てる。 「じゃ、いってきます」 「いってきまーす!」 「(バイバイと手を振る)」 と三人がそれぞれに挨拶をして出て行くと ママは深い安堵感にとらわれる。 もちろん、ここからママのお出かけ準備が始まるので、 そんなにゆっくりしているひまはないのだが、 ともかく一瞬ホッとするのだ。「……やっと行った…」 そして大忙しで食卓を片付け、 子供たちが散らかしたおもちゃや絵本をちょっと片付け、 キッチンで食器を洗い、夕食用にお米を研ぐ。 「今晩のおかずは何にしようかなぁ……」 と、そのとき…… ガサガサッ…という音とともに、黒い影がリビングを横切った。 「!! なにっ?」 ギョッとして振り返るが、キッチンは独立なので、 リビング全体は見渡せない。 たしか今、黒い影は私の目の高さだった… と、今度は廊下の方からガサガサッという音。 「……もしかして?」 ピッキングの被害は急増中、 以前このマンションでも入られた家があったらしい。 …いや、ドアの鍵は開いている!! 洗いカゴに立てかけた包丁をそっと握りしめる。 いや、腕に覚えがない人は凶器を持たないほうがいいかも。 思い直して包丁を置くと、息を殺してそぉーっとキッチンを出る。 とそのとき、開け放ったリビングの窓から 爽やかな風が吹き込んできた。 同時にまたあの音! --ガサガサッ-- 「そこだぁっっ!!」 振り返ったママが見たものは、 風に吹かれて廊下をふわ〜っと漂っていく、 巨大なミッキーマウスの顔だった。 ……君かい、ミッキー……(^^;) そろそろ空気が抜けてきたんだね、 鼻先がシワシワになってきてる。 今度パパが詰め替え用のヘリウムガス買ってくれるってさ。 そしたらもう、 風に吹かれたくらいでガサガサいわなくてすむよね…… TDL土産のミッキー風船、 黒と肌色の配色が、ときどき妙にリアルで怖いと思うのは、 私だけだろうか。
2001年05月23日(水)
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