ぼんのう
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2003年08月23日(土) 富士山登頂(二日目)

あー眠いー・・・
富士宮駅前発の五合目行きバスは7時20分に出るというので、朝食をとらずにホテルをチェックアウトする。登山において重要なのは、早くに発ち、早くに小屋までたどり着くこと・・・にしても眠いー・・・朝には強いのだが、昨晩食べたビビンパのせいなのか、それとも遠足前の興奮のせいなのか、寝つきが悪かったよお・・・。
なもので、ずーっと熟睡。

五合目間際になり、カーブが多くなったこともあって、目を覚ます。真っ先に眼に入ったのは

車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車車

路上駐車の

列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列列

夜の吉祥寺で路上駐車するチンピラヤクザの車よりタチが悪いくらいに、思わず『なんじゃこらあ!』と叫びたくなった。
聞く所、富士宮登山口は、他の登山口と違い、駐車場の面積が非常に狭い為、自然、延々とこのような路上駐車のオンパレードガンパレードな光景が見られるという。

自家用車に乗って登る山なのか?富士山が世界遺産にならないのは、ゴミとかトイレとかだけではなく、このようなことにも原因があるように思えるんだけどなあ・・・。
それにここに車が止められているということは、富士宮登山道を下るということなんだよな?
・・・ガイドブックでの情報だけど、富士宮って、下りが地獄らしいぞ?(このことに関して、後ほど、そのような場面をたくさん見ることになる。自家用車に乗ってまで来るのはどーかと思うなあ・・・第一、登山における自由な楽しみ方がなくなってしまうと思うけどな・・・それとも、自慢の自家用車を見せびらかしたいのかな?)

何やかんやと思いをめぐらせると、いよいよ5合目に到着。トイレに駆け込み、用を済ませ、軽い準備体操をはじめる・・・

息切れする

二千メートルをとっくに超えてしまっているのだ。空気も薄い。登る前から凄まじい孤独な不安感を抱き始める。何せ登るのは我輩一人。サポートする者は誰もいない。励ます者もいない。調子を客観的に診てくれる同行者もいない。いくら人通りが多いと言っても、日本最高峰・・・高山病を患い、悪化すれば死ぬことさえも珍しくない。

うひー!軽い息切れだけで、登る前からマイナス思考がグルグル回ってしまっている・・・。もう登るしかない。登るのだ。全ては自己責任!集団よりも一人でいることのよさは、マイペース、そして他人に何でも依存してしまうという甘えが最初からないことでの、気持ちの引き締めがある。普段の我輩でも、そうではないか!甘えは一片もない生き方をしてきたのだ!いつもの生き方で、最初の一歩を踏み出せばいいのだ!


8:55 富士宮5合目出発
   思っていたより快調。多少ザレているものの、大変歩きやすい。
   軽い傾斜もあり、ちょっとした準備運動にもってこいの道だ。

9:30 新六合目到着
   急に腹がすく。山小屋に入り、朝食として天ぷら蕎麦を食す。
   インスタントカップ麺にはいっている天ぷらであったが、
   腹を満たすのに十分であるし、2500m超えている地点で、
   何を求めようか?

10:00 七合目小屋到着
   少しずつ富士山本来の姿が見え始める。
   道は大変険しく、空気も薄い。30歩歩いて1回休憩するペース。
   非常に気になるところだが、登山客の中に、どーしても納得
   できない姿をした集団を多く見かける。
   刹那的な快楽だけでしか生きがいを見せないような連中が、
   ゴムぞうりを履き、香水をプンプンさせて、GAPの袋に
   多分登山用品を入れて登っている。
   どこまで登るのか、見物だ。

10:40 八合目小屋到着
   雲の殆どが眼下にある。太陽光線が目に痛い。
   空気が明らかに薄くなっている。立ち止まって一休みするたびに
   ぜーぜーと息切れがする。
   当初予定していた以上のスピードで到着する。
   ただ、この山小屋、何ともいえない殿様商売をしている。
   休憩している登山客に、『金だせ金だせ!』と言い、
   トイレを使うと、『山頂まで我慢しろ!200円出せ!』と言う。
   銭ゲバな山小屋もあったものだ。
   この小屋では一本の水が500円。後で知るが、山頂と同じ金額。
   山小屋の後ろの方で、富士山を舐めている連中が、この小屋の
   呪縛に捕まってしまったのか、ダウンしていた。
   我輩の呪縛に捕まらないようにと、早めに出立した。
   少し登ったところで、下を見る。
   八合目小屋に向かって、近くにある巨石を押したくなった。
   ゴミ、トイレ、車以前に、あのような山小屋があるから、
   世界遺産になれないでいるのではないか?

11:40 おかしい、いつまで経っても九合目にたどり着けない。
   空気が薄すぎる。若い頃、奥穂高岳に登ったが、あれは
   山頂の部分までほんのわずかな時間でよじ登っただけであった。
   だが今は、同じような高さのところで、思い荷物を背負い、
   長時間登っている。道、甚だ険しく、心慰む鳥も花もなし。
   ・・・これは地獄だ。
   5歩歩いて1分以上休む。
   上から下山する人達が大勢いる。だが、登るに苦しい道は、
   下るには精神的にきつい道でもある。あちこちで、急傾斜に怯え、
   浮石ザレキに足をとられ転倒する者多し。
   登るも地獄。下るも地獄。
   なぜ登っているのだ?
   我輩はなぜ、一人で富士山を登っているのだ?

12:20 大幅に予定が遅れて、九合目山小屋に到着する。
   ここまで来ると、登山客は皆、それ相当の装備をした人のみ。
   カレーライスを注文し、食する。美味い。宿泊する小屋も
   おそらくカレーライスであろうが、それでもよい。
   この山小屋は先程とは比べ物にならないくらい、よい雰囲気。
   水3本買えば1000円というのも、良い。
   疲労困憊ではあるが従業員も感じよい。
   我輩の他に、外国人登山客の団体がいた。
   アラビア語を喋っている。
   空気薄い所でクルアーンを唱えるのも苦しいであろう。
   我輩も頂上で祝詞をあげると、絶対窒息してしまうかもしれない。

15:30 目的地の九号五匁山小屋に達する。
   最後のほうになると、3歩進んで2分休むという状況。
   宿泊費を支払って、酸素ボンベを取り出して吸引。
   だめだ。さっきから頭の後ろが痛い。高山病になってしまった。
   しかし今、泊まるべき小屋にいる。
   軽く一眠りする。
   就寝場所は噂どおりに狭く、布団も冷たい。
   あるルートで入手したアメリカ陸軍の防寒シートを取り出し、
   包まって夕食まで一眠りする。正解であった。
   夕食はやはりカレーであった。
   隣で寝ることになった3人組の会社員達と同じテーブルに座り、
   直ぐに仲良くなる。一人でいると、見知らぬ人の中でも
   入り込み、いつのまにか友達感覚にしてしまう。
   我輩自身、何ともイヤな才能かもしれない。
   消灯まで外に出る。
   真っ暗であるにも関わらず、登る人、降りる人。
   漆黒の宵闇にうずもれた山頂も、登る人の明かりでその位置を
   知ることができた。
   軽く背伸びをする。冷たい空気が鼻の奥に心地よくあたる。
   美味い空気ではないが、気持ちがよい。
   我輩はなんでこの山に登っているのか?
   これらを理由とするには、まだ早計だ。


ANDY 山本 |HomePage

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