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非常勤先3連荘の日。 そのうちどこかの先に行く途中、運よく急行に座れたのでほっとしたのもつかの間、どかっと隣に腰を下ろす若者。急いできたのか汗ばんでいる。ごそごそと大小の紙を取り出して、シャーペンで書付け始める。大きい紙は大学制定の解答用紙B4版。上2行に著作権の何々について説明せよ、など印字してある。小さい紙はどこぞのサイトからプリントアウトしたらしきもの@出所不明(つまりURL記載なし)。文面は著作権入門といった感じで、「著作権には何々権、何々権などがあり…」などが「ですます」体で書かれている。 彼はそれを急行に乗っている20分の間に書いてしまおうという寸法らしい。大学ノートを下敷き代わりにして、まず「著作権とは、」と書き出し、プリントアウト読む。また「創造物に対して発生する権利で云々…」と書き、しばしプリントアウトを読み「著作権には、著作財産権、著作隣接権…」と書く。なにしろ全体を理解していないので、作業は遅々として進まない。しかも風邪をひいたのか5秒ごとに鼻をすすり上げている。そのうちに冷や汗か脂汗か、額から汗がぽとりと落ち、ご家庭用のインクジェットの哀しさで、大切な大切なあんちょこであるプリントアウトの文字がジワリとにじむ。あわててそれを掌でぬぐう彼、哀れ、字はぐにゃりとにじみ、彼の手にはインクがべったりとつく。 よほどティッシュを貸してあげようと思ったが、そうしたらきっと「きみきみ、せめて全体を通読してから書きなさい、それから電車を降りて机のあるところで書きなさい」などとお説教してしまいそうなので、じっとこらえて、このありがちだがあってほしくない光景に目を背けていた。しかしどうしても気になることが一つだけあるので、こっそりと何度も彼の手で隠れたあたりを窺って、解答用紙に印字された大学名を盗み見た。ああ、果たして、そこに印字された大学名は、まさにこれから私が向かう先だったのだ。 降車駅に近づく頃、彼はやっと20分で10行のレポートを仕上げたようだ。ちなみに参考文献の記載なし。これこそが著作権侵害だとは、きっと彼は気づいていないだろう。隣に座っていたので同じドアから降り、同じタイミングで改札に向かっていたのだが、突然彼の姿が視界から消えた。振り返ってみると、駅のベンチに置いてあったマンガ雑誌を取り上げて、早速歩きながら読み始める*貪欲*な彼の姿があったのだった。ちゃんちゃん。 ××× これもまたどっかの非常勤で、必修なのに再々履修の4年生が数週間ぶりに出席。当然課題も全然提出していない。授業が終わった後にやってきて、「先生、課題はこれでいいですか」と差し出したのは、別の担当教員の形式によるもの(つまり去年の使いまわし)。ここだけ教えてください、このやり方も教えてください、ここだけどうしても今やって帰りたいんです、といって粘り、私はいろいろこの後の予定もあるというのに、結局30分時間オーバー。 個人指導はやぶさかではないが度が過ぎている。君は私の時間が無限にあると思っていないか。そう言うと「すみません、ほんとすみません、でもお願いします。」と食い下がる。その根気を去年、いや、せめて先月に出して欲しかったね。聞けば講義に出なかった間、教育実習に行っていたのだという。君は、教員が学生のことを心配しているとか、学生のことで心傷つくとか、そういうことを考えたこともないんだろうなと言うと「いや教育実習に行ってよくわかりました。これからはちゃんとやります。単位欲しいです。」と言った。 邪気のなさにあっけにとられる。 ××× またもどこかの非常勤先で。 ばたばたと時間が押してしまったので、帰り際に急いで次回の配布資料の準備をする。印刷機はともかく、帳合機の使い方がよくわからない。紙詰まりランプがついているので、開いてみるといつの資料だか判らないものが挟まっていた。取り除いてゴミ箱を探すと、見当たらない。よくみると印刷機がある小部屋のあちこちに余った紙が散乱している。壁には「プリント余部はダンボール箱に捨ててください」と書いてあるが、そんなものどこにもない。あきらめて部屋の外の紙くずかごに何回か捨てに行ったが、そこにプリントががさがさ捨ててある。ここは再利用をしないのだなと思いながら印刷小部屋に戻ると、小部屋のドアの裏にダンボール箱があるのを発見。これじゃ見えないよ(-"-) そういえば壁にべたべたと印刷機の使い方やらエラーの処理の方法やら、所狭しと貼り付けてある。自分でやれってことですな。でも帳合機に関しては何も書いていないのだ。で、帳合機。全部セットしてボタンを押したが稼動しない。控え室の事務のところまで言って使い方を教えてくださいというと、若い男性が「ホッチキスっすか。使い方っすか。」と言う。最終的にはホッチキスなりで留めるんだからまあ、いいだろうと思って「そうです」というと、私には答えずそのまま隣の男性に振る。その後、仕事を振られた男性が歩いてくるのだが、当社比3.5倍ぐらいの速度(-"-)。のろのろと近づいてきた彼は、「えーっと」などとぶつぶついいながら、何とか機械を動かしてくれた。ホッチキス留めも出来た。 がたがたがたがた大げさな音を出しながら、束が吐き出されてくる。これなら手でやったほうが早いなぁと思いながら安心していると、ホッチキスが留まってないものが数部出てきた。彼はホッチキスの針を確認した後、留まってないものに関しては「まあ、なんとなく束になってますから…」と言った。それは、たとえばその場を取り繕うために、気を遣って私が言うことであって、君が言うことじゃないだろう。 まあ一事が万事その調子で、その後彼にホッチキスを借り、自分でホッチキス留めをし、印刷機および帳合機の後始末をし、結局予定より1時間遅くどこかの非常勤先を去ることに。帰り際に事務の女性に「では、失礼します。」と挨拶をすると、「ああ、さようなら。」…普通は「お疲れ様でした。」とか「ありがとうございました。」と言われるのだが、非常勤先の講師控え室で去り際に「さようなら」の一言で済まされたのは、初めての経験だった。 ××× またまたどこかの非常勤先での話。先週、教員の身分証明書の発行を申請していて、それを受け取りに行くことになっていた。ばたばたしていたので、窓口に受け取りに行ったのは、窓口終了時間の10分前。既にしまっていましたとさ、ちゃんちゃん。まだ開いていた隣の部署に聞いたら、全員早帰りしたらしい。飲み会ですかね。 ××× 普段当たり前と思っていたことが、そうではないことがわかり、いろいろびっくりした一日だった。
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