WELLA DiaryINDEX|past|will
いよいよフィヨルド観光である。観光案内所でくれるパンフレットには、"ノルウェー・イン・ア・ナットシェルNorway in a Nutshell”http://www.norwaynutshell.com/default.aspと呼ばれる公共交通機関を乗り継ぐいくつかの観光モデルルートが紹介されていて、窓口で「このコースをください」というと、窓口などで切符をセットで買うことができ、船の乗り継ぎなどもスムーズにできる。旅行の立山のアルペンルートのような、といえばわかるだろうか、団体ツアーの段取りのよさと個人ツアーのきままさがセットになっている。夫はその中の2コース(つまり2日分)の切符を買っていて、ひとつはもっとも貴重なツアー、もうひとつはもっとも人気のあるツアーと書いてある。 今日はもっとも貴重なツアーのほうで、朝8時半にベルゲンから高速艇に乗り、ソグネフィヨルドというノルウェー最大のフィヨルドを進み、さらにフェリーを乗り継いで、フィヨルドの奥に進み、上陸して氷河博物館を見学して、氷河を見てくるという段取りである。例によって朝食の時に昼用のサンドイッチと果物を持って、部屋にあるお茶セットで紅茶をいれてペットボトルにつめて出かける。あるものはすべて着込んだがそれでも寒い。船に乗り込むと、日本人の家族連れが2組。1組は朝食の時ホテルで見かけた熟年夫婦と私と同年代の娘さんらしい3人組、もう1組はやはり親子3人連れだが息子は大学生ぐらい。そのほかにも生活の足として使っている人たちや、旅行の移動手段として大きな荷物とともに乗り込んでくる人もいる。あっちこっち移動したりカメラを構えて興奮しているのは観光客、座席にどっかりと腰をすえたまま居眠りしたり新聞を読みふけっているのは地元の生活者なのだろう。ここにも子どもの遊び道具は充実していて、真ん中にしつらえられたテレビでは「カリブの海賊」ビデオを流していて、少年が釘付けになっている。さらにテレビの裏側には、ガラス張りの一畳ほどの子供用ブースがあって、おもちゃなどがおいてある。ブース内でもビデオが見られるらしい。 あいにくの雨もよいの中船はゆっくりと外洋へ向かって進む。この船には3時間乗る。外は相当寒いらしい。両岸に白や黄色のおもちゃのような白い家などが点在していて、鉄道模型などのジオラマにそっくりだ。しきりに写真を撮る。窓の様子やドアなどを考えると、小さい家ではないことに気づいた。周りに対比する建物などが少なく、風景があまりに大きいので小さく見えるのだ。船はいくつかの船着場に寄りながら奥へ奥へと進む。船着場がある場所は小さな村だったり、観光拠点だったり、そのつど大きな荷物を持った人が降りていったり、自転車を担いだ人が乗りこんできたりする。目の前にフィヨルドの切り立った斜面が次々と現れてくる。途中で小さなフェリーに乗り換え。ここにもホテルがあるので何人か降りる人がいる。日本人グループもここで降りたようだ。それぞれバイクに乗った男女がフェリーに乗り込んでいる。こうやってバイクで旅しているのだな。安くてラッキーだよなどと係員が言っているが、いったいなに?。 あたりの景色を撮って乗客の最後のほうにフェリーに乗り込むと、甲板の上は各自好きなところにプラスティックの椅子を置いて座るようになっていて、めぼしいところはすでに人が一杯。かろうじてトイレ近くの人のあまりいないところに陣取る。椅子が固定されていないということは、それだけ水面が穏やかだということなのだ。持ってきたお昼を食べ、景色を眺める。水面は鏡のように穏やかで、前を向いても後ろを振り返っても斜面。後方は自らの船がつけたさざなみが立っているぐらいの違いである。しばらくすると小雨が降りだして乗客の大部分は下のカフェにしけこんでしまう。我慢して甲板にいると氷河が見えてきた。おおー。興奮して写真を撮っていると、例によってデジカメのバッテリーが切れてしまう。雨が強くなってきたので私たちも下へおりるが、座る場所がないのでまた甲板へ逆戻り、などとやっているうちに目的地フィエールラン(Fjærland)へ。 船が着くとバスが迎えに来ていてそのままノルウェー氷河博物館 (Norsk Bremuseum) http://www.bre.museum.no/へ向かう。バイクの二人連れは軽々とバスを抜き去っていった。なるほど、バス代がない分安いのか。ソグネフィヨルドに隣接している北ヨーロッパ最大の国立公園「ヨステダール氷河(Jostedal Glacier National Park)」に関する展示や映画を見る。ここではいろいろな実験道具をつかって、氷河がどうやってできるのかや、なぜ氷河は青いのか、など学習することができる。日本語のパンフレットもある。一通り屋上に展望台があり氷河を眺める。展望台らしくコイン式の望遠鏡があったので大枚をはたいて覗いてみる。うわっごつごつ。氷河の表面は何度も部分的に解けたりまた凍ったりしているせいで、かなりでこぼこしている。遠目ではわからなかったことである。望遠鏡のレンズ越しに写真が取れるかと思ったがさすがに無理。ちょっと飽きてきたので、残り時間はさっき写真を撮りあったカップルに譲ってその場を離れる。振り返ってみると、望遠鏡は長蛇の列である。サクラの重要性を感じる。 さらにバスにのっていよいよ氷河へ。駐車場からぬかるんだ道を歩いて氷河を川越しに見る場所へ。去年大規模な崩落が起きて、死亡事故があったらしい。崩落したために氷河もパンフレットとは姿を変えている。地球温暖化の影響か、崩落部分を抜きにしても以前より小さくなっているように見える。最近も大雨が降って氷河が大量の水を含んで崩落が起こりやすくなっているので、気をつけるようにガイドさんが口をすっぱくして言う(ところで、なぜくどくどと注意することを「口をすっぱくする」というのだろうか。のどが渇いてしょっぱい感じはするけれど、すっぱいと思ったことはない)。氷河をバックにめいめい写真を撮ったり、空を見上げたりしてすごす。バスに戻ってまた博物館経由で波止場まで。バイクの二人連れはさらにどこかへ旅立ってしまったらしい。羽を持たないわれわれはまた船に乗り込む。さっき来た道をこのまま戻るので大部分の乗客はサロンに入ってしまった。同じといっても右側通行らしく、行きとは反対の岸の近くを通っている。たまに岸の上の親子連れに手を振ったりしてのどかに船は進む。フィヨルドをまたいで電線が渡っている。どうやって渡したのだろう。 しばらくするとまた雨が降ってきて寒くなってきたので、われわれもサロンへ行くが座る場所がない。しかたなく廊下に立っていたりするが、それも情けないのでまた外へ出る。後方に虹が出ていた。乗客も興奮気味である。一度虹の根元を見てみたいと思っていたが、180度以上の虹になっていてどれが根元とは言えないことがわかった。 また大きな高速艇に乗り換え、ベルゲンへ戻る。夕方なのでより生活者が多くなっているようだ。すこしうとうとする。 夕食はホテルのラウンジで軽く済ます。ロビーに面した席に座っていると、朝方見かけた日本人夫妻が戻ってきた。はじめの高速艇を降りてからどういうルートを観光したのだろう。娘さんの姿が見えなかったが、旅なれた雰囲気のお二人である。年金も心配なくもらって悠々自適なんだろうなぁなどと想像をたくましくする。明日もフィヨルド観光。
|