WELLA
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2004年08月23日(月) フィヨルド車窓の旅

今日こそは晴天。
朝からお弁当作りにも力が入る。朝食時に赤ちゃん連れの日本人家族を見る。赤ちゃんは離乳食が始まった頃らしく、お母さんはその場でお湯をもらって粉ミルクを調合し、だんなさんに指示してもってこさせたバナナなどをつぶして赤ちゃんの食事を用意する。その顔つきは真剣そのもので、その様子はなんだか神聖なる儀式のようだった。
駅まで歩いて、モデルコースに指定された電車に乗る。今日の目玉は、フロム鉄道。http://www.flaamsbana.no/jap/Index.html。オスロからベルゲンへ来る途中にあるミルダールという駅から急勾配をふもとの入り江まで降りていく。駅で乗り換えると、めぼしい車両はほとんど旅行会社の貸切になっていて、なかなか席が取れない。右往左往しているやっとの思いで席を二つ確保する。日本人の団体客も多い。途中車内アナウンスで左右に見えるview pointを案内してくれるので、座っている暇はない。あるときは車両の右側に、あるときは左側に人々が殺到する。途中で十数分停車した駅はホームから滝が見え、その滝の脇に赤いドレスを纏った美女が歌うというへんてこりんなサービスがついているところだが、たまたまわれわれが座った席は滝の真正面。降りることなく写真が取れてよかった。隣のボックス席には90歳を優に超えているだろうイギリス人らしいおじいさんがいて、息子の世代と一族で旅行に来ているらしい。おじいさんもカメラを持っているがなかなかシャッターを切るところまでは行かない模様。チケットも胸ポケットに入ってるし、年寄り扱いしないところがいいなあと思う。
歓声を上げながらシャッターを切りつづけて電車は谷底の入り江につく。ここでしばらく時間を費やして今度は船に乗るのだという。これといってぴんとくるレストランもないので、駅の脇にあったコープでパンや果物を買う。ここで発見したのがチューブ入りのクリームチーズ。歯磨きチューブのような体裁で甘エビが印刷してある。すり身が入っているらしい。他にもサーモン味などもあるようだ。おひょひょーと面白がって甘エビ味一つ購入。夫は支払いのときにもたついていて、太った観光客の女性に"Excuse me!!Grazie!"とか言われていた。ふん、感じの悪い。ベンチに腰掛けて、朝ホテルから持ってきた果物と一緒に早速さっきのチーズペーストをパンに塗ってみる。んー。んー。んー。これはどこかで食べたことのあるような…と思ってはたと思い出した。「チーかま」だ。懐かしい。また見つけたらどこかで買おう。
食事も済んだので1便早い観光船に乗る。この後はまたフィヨルド、フィヨルド、フィヨルドである。初日の興奮はうせ、ただただ圧倒されながら入り江を進む。この頃になって急に「フィヨルドのU字型に削られた状態っていうのは垂直方向のことを言っていたのか!」ということに思い至った。小学校の社会科で、三陸のリアス式海岸と北欧のフィヨルドをセットにして習った記憶があるのだが、地図で見るとどちらも海岸線がぎざぎざになっていて、てっきり水平方向に削られていたのかと思っていた。これでも社会科は得意科目でテストの成績も良かったのだ。うーむ。二次元の教科書学習の限界だな。
天気はよいがやや肌寒い。ほとんどの人はデッキに出ているが、カフェにしけこむ人も。すでにカフェは満員なので中央の屋内部分でしばし日向ぼっこ。再びデッキに出るとほどなく船内アナウンスがありどっとみんなが船の片側に集まってくる。アザラシがいるのだという。確かに水面にアザラシらしき頭がいくつか浮かんでいる。アザラシ。実感はないがここはやはり海なのだ。やがて船は大きな滝へ近づいていく。この滝の水は不老長寿の水だとかで、これを皆さんに振舞うのでご興味のある方はどうぞというアナウンス。船は先頭を滝のほうへ向け止まる。ものものしくロープが張られ、乗客と船員の境が作られたと思ったら、船員がしゅるしゅると伸縮自在のホースを伸ばして先を滝につっっこむ。こちら側には輝くアルミのバケツ。あれよあれよという間にバケツ2杯分の取水完了。これからはみんな殺到。ひしゃくから水を汲んで一人ずつプラコップに入れて渡してくれる。気まぐれに脇の人に渡したりするのでなかなか順番が回ってこない。こういうときにラテン系の人とかは存在感があってすぐにもらえるのだが、日本人は目立たないのか?持参の水筒に入れてくれという人もいてここまでわたるかひやひやする。やっと夫と私の分を手に入れて飲む。甘い。船内には一挙に笑顔を和やかさが広がる。たとえただの水でも、なにかしら食べ物が配られるとこんなにも人の心は浮き立つものなのか。
さらに船は進み、今度はカヌーをこぐ一行に手を振ったり、陸路からのアクセスができない集落などを見ながら終点着。ここでバスに乗り換える。下船を待つ列に加わっていると、朝ホテルで見かけた赤ちゃん連れの日本人の姿も。赤ちゃんは7ヶ月らしい。ヨーロッパ駐在の人なのだろう。他にも何人か日本人を見かける。バスに向かう道で別方向から船で来て別の船に乗り換える団体とすれ違う。こっちも日本人だらけ。バスは言語別に分かれているが日本語はないので英語・ドイツ語バスに乗る。つづら折の道をのぼっていくと、眼下にムーミン谷のような集落が見える。本当にこういう立地はあるんだなぁとしみじみ思う。揺れながら写真を取りまくる。次の停留所は高台にあるホテル。展望テラスから景色を眺めるとちょうどさっきのムーミン谷が一望できる。あまりに美しいので2時間後の次のバスで帰ることにする。時折遠くで車の音がする以外は本当に静か。ここは典型的な滞在型ホテルらしく、夕暮れ時(といってもまだ日は高いが)を散歩しながら過ごす家族連れや老夫婦が多い。ラウンジでビールを買って庭でぼんやりしながら飲む。至福。
バスは時々観光客をどっさり連れてきて、10分ほどでまた去っていく。韓国人らしい団体客は男性ばかり。ポーズをとりながら次々と絶景をバックに写真に収まっている。韓国女性のグループを見かけないことはないのだが、ジャケットを着こんだ韓国男性の旅行団というのは本当によく見かける。そろそろ次のバスが来る頃のなのでトイレを済まそうと思ったら今度はドイツ系のグループと日本人のグループで込みこみ。やっと済ませて外に出たらもうバスが来ているというので、早速乗り込む。バスは一路終点ヴォス駅まで。ここからベルゲンまで電車で戻る。出発までまだ時間があるのでほとりを散歩する。美しい教会がある。水辺からモータつきのパラグライダが一機飛び立っていった。
駅に戻り席はあらかた埋まっているが、先頭車両まで移動すると何とか窓際の席に陣取る。6人がけのボックス席。行きと同じ側になってしまった。
反対側には日本人の母娘。欧州留学中の娘のところに母が遊びに来たという雰囲気。4人がけのボックス席の窓際に座って脇には荷物を置いている。まだ席を探している乗客がいるので、荷物ぐらい棚に上げればいいのにと思って様子を見ているうちに、やがて文庫本を読み始めた。窓際をとってそれぞれ文庫本を読んでいるぐらいなら、窓のないところに座ればいいのに、と思うまもなく二人とも眠り込んでしまった。猫に小判。われわれの席には、フロム鉄道で一緒になった90歳過ぎのおじいさんとその息子が移ってきた。英語は聞き取れないけれど、息子の子供の頃の話とか時事の話とか、動作や話し方はゆっくりだけど全然老いた様子がない。一族から尊敬されているおじいさんなんだろう。帰りのほうが天気がよくなってまた違った情景を見ながらベルゲン駅へ。
ホテルに帰る前に、昨日船の中に手袋を忘れてきたのでそれを取りに行くが、見つからない。係員はざっと見て、即座にないと答えるのだが、"I'm sorry"と本当にこちらを気の毒がる表情を見せてくれる。やってることはぞんざいなのだが、申し訳なさそうな顔をしてくれるのでこちらも癒されるというか、こういうのは大切だと思った。帰りに地元のスーパーに行くと、お昼見つけたクリームチーズのペーストがあった。しかもハム味とかベーコン味もある。夕食にするお惣菜をいくつかと、これを数種類と間違いじゃないかと思うほど格安(通常価格の1/4ほど)のハーブティーをお土産に買った。
明日はスウェーデンへ移動。


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