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いやー、ほんとに雨ばっかり。 夫のコーディネーションによると、今日は午前博物館を見て、散歩をして、午後からスティーヴチャーチ(Fantoft Stavkirke スターヴ教会)と呼ばれる木造教会+作曲家グリークの家(Troldhaugen トロルハウゲン)を回るバスツアーに参加するという。泊まっているホテルは、世界遺産に指定されているブリッゲンという地区にあり、隣がブリッゲン博物館なのでまずそこから。このあたり三角屋根の古い木造家屋が続いている。木造だけに何度か大きな火災に遭っている。そのたびに同じ様に復元していて、遺構の一部や、当時の生活の様子なども展示されている。ブリッゲン博物館(Bryggen Museum)を出て今度は反対側の一角にあるハンザ博物館(Hanseatisk Museum)へ。ベルゲンはハンザ貿易都市で、鱈を輸出していたらしい。紋章の右半分に鱈、左半分に鷲が意匠になっている。これは名物ハンザビールのマークに残っている。博物館の中に入るとあちこちに当時の干し鱈が天井から下がっているというのだが、どれも古く見えてよくわからない。急勾配の階段、狭い部屋のあちこちにしつられられた押入れのようなベッドが当時の生活をしのばせる。同じチケットで別館を見られるというのだが、時間がないので、あきらめて街の行ったことのないエリアを散策。散策といいつつ途中で雨に降られて、興味深いながらもかなり惨めな気分になる。バスツアーの出発時間になるまで、冷え切った身体を目の前の観光案内所で雨宿り。 ツアーは英語か独逸語のガイドがつく。乗客は夫婦3組+若者一人で英語話者。そろそろ出発しようという時、大きな船が港まで入ってきた。汽笛の音が鳴り響く。まさかこんな大きな船が停泊できる港だと思っていなかったので驚いていると、入ってきたのは特別のクルーズ船だというようなことをガイドが教えてくれた。通常は港の端の停泊所にとまるのだが、今日は船が特別なのか日にちが特別なのか、とにかく特別らしい。いずれにしてもこの11日間のクルーズはずいぶん人気なのだという。3時から6時の間に一般公開されるということで、このバスツアーの終了予定時刻が5時なので帰ってからいけるかもしれない。 バスはベルゲンの市街地を抜けあっという間に郊外へ。ゆとりのある集合住宅がいくつもある。このあたりは引退した人たちが都心の一戸建てを処分して、手入れの楽な集合住宅へ移り住むのだという。まずはじめに訪れたスティーヴチャーチはオリジナルではなく復元されたものらしい。中に入ると新しい木のにおいがする。日本のしゃちほこを連想させるような屋根飾りがついている。中で説明を聞いて何枚か写真を撮ってバスへ戻る。そぼふる雨の中、林を抜けていくと、前を歩くガイドがわきに生えている木の実をぱっとつまんで口の中に入れた。木苺だ。まねをして1つつまむ。甘い。 雨は霧雨のように身体にまとわりついて、かなり寒い。がたがた震えながら次はグリークの家へ。グリークの作品はペールギュント組曲とピアノ協奏曲ぐらいしかなじみがないが、ノルウェーでは絶大な人気を誇る音楽家らしい。冬を嫌って、冬中外国を演奏旅行したグリークは、夏の間最愛の妻とここで友人を招いたりコンサートをしたりしてすごしたのだという。写真などで見ると小さなコテージといった趣だが、入ってみると天井が高くて広い。グリーク本人は160cm足らずの小男だったようで、邸内に飾られた写真には、その分人一倍ふんぞり返っている姿が何枚も収められている。グリークが演奏旅行の時に常に携帯していたかえるの置物などを見る。案内の若い女性が他の観光客にその理由を尋ねられて「たぶん日本のことわざでかえるは幸運のシンボルだった…」と説明していた。日本ではかえるが「無事帰る」のシンボルだということをのどまで出掛かっていたが、言い出せずに飲み込んだ。こういうときにさっと発言できる語学力と度胸を養いたい。敷地にはその他にコンサートホール、博物館、グリークの横顔をモチーフにしたモニュメントなどがある。コンサートホールは自然の景観を上手く取り入れた建物で本当にすばらしい。博物館を見たあと地下でグリークのビデオを見せられる。なんだか授業のようだ。1階のレストランから鳥のから揚げの香りが漂ってきてそちらのほうが気になった。 時間になってバスに乗り込む。このまま戻るのかと思ったら、バスは山道を上っていき、ベルゲンの町を見下ろせる展望台へついた。ここからだとフィヨルドになっている様子などがよくわかる。これを見れば別に大きなケーブルカーに乗る必要はないし、物価が高いので当然バスツアー代も予想以上に高かったのだが、この寄り道でかなり満足度があがった。ベルゲンの町まで降りてくる。教会と木造の病院の跡地の脇を通った。ハンセン病記念博物館ということである。癩の病原菌を突き止めた医師ハンセンはベルゲン出身で、ここの教会付属病院で治療に当たったということである。こんな街中に、と日本でハンセン病の人たちへの不当な扱いを思い起こし、軽い衝撃を覚える。 予定バスツアー終了。先ほどの船の見学に行く。この船は、物資運搬船兼観光船で、ノルウェーの海岸線を物資を下ろしながら北の端まで航海する。今夜20時に出発するまで、プロモーションをかねて船内を一般公開している。空室の船室があり、はいりこんでちゃっかりくつろぐ人もいれば、なれた様子でラウンジでビールを注文している人もいる。われわれも怒られたらごめんなさいをすればいいと割り切ってあっちこっち貪欲に見て回る。貨物を入れる空間にはいくつか業者が出店していて、物産や観光地をアピールしながら飲食物を振舞っている。うわっ!タダ!ジュースを飲み、あつあつのソーセージをほおばり、魚介のムースを食べ、デニッシュを食べる。どこかの高級ホテルのコーナーでは、プラムを配っていた。ホテルの敷地でとれたプラムかどうかはしらないが、粋な配り物である。キャンディを見つけたので「あ♪キャンディもらっちゃおう」とはしゃいでいたら、横に立っていたおじさんに微笑まれた。すごく子どもに思われているらしい。赤面。いつかこんな優雅なたびが出来るといいなと思いながら、パンフレットなどをもらって下船。 一度ホテルに戻って少し休憩する。どこからかブラスバンドの音がする。ホテルを出てみると、ブラスバンドを乗せた小船が、演奏しながら観光船の周りを走っていた。夫が目をつけていたレストランへ。地元の人にも人気らしく、大変な混雑。運よく二人分の席があいていてすぐに食事にありつくことが出来た。レストランは偶然さっきの船が停泊している目の前。例によってフィッシュスープ、私はカニのパテにサラダとパンがついたものを頼む。ハンザビールを飲む。食事が終わって21時。まだ船は出港していない。 今日も早寝をする。食べて、寝て、遊んでは続く。
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