WELLA DiaryINDEX|past|will
暑い土曜日の夕方、靖国神社周辺へ。このあたりは緑が濃く、歩いていても気持ちがいいのだが、今日は大型バスが所狭しと停車中で、排気ガスと地面からの熱気でむんむんである。各地から戦歿者が集まっているようだ。「みたままつり」をやっているという。http://www.yasukuni.or.jp/event/mitama.html そのまま普段は立ち入らない神社の参道に足を踏み入れてみると、なるほど両側にやぐらが組まれ、そこに黄色い提灯がびっしりとかけられていて、提灯にはそれぞれ奉納者の名前が入れられてある。それをひとつずつなんとなく読んでいるうちにあることに気付いた。普通神社などに奉納されている提灯には男性名が多いのだが、ここは「○○キク」「○○たけ」「○○ウメ」という具合に、ほとんどが高齢者らしい女性名なのである。戦争未亡人か息子を失った人か、永代奉納もあるらしいので、すでに彼女自身がこの世の人でない可能性もある。おびただしい数の女性名を見ながら奥へ進むと、本殿に近いほうは、企業や団体の奉納した提灯が並ぶ。この辺は、一つの提灯に一文字ずついれて、まとまったスペースで何文字かをあらわしたものも多い。近隣の商店やホテルの名前などもある。さらに「○○遺族会」「海軍兵学校○期」「戦艦○○」といった文字が並ぶ。戦歿者の遺族、残された戦友たちが奉納したものなのだ。ぐっと圧迫されるような息苦しさに、いたたまれずに参道から脇の道に逃れた。 政治家の靖国参拝の是非をめぐって今年もまた多くの報道がなされ、近隣アジア諸国からも非難の声明が出されるだろう。しかし、過去の戦争において、愛するものや家族と離れて戦地に赴いて命を落とした多くの人々がいること、彼らを愛し彼らが愛した人々が残された事実は消えない。戦争で人生を失った全ての人々への魂が安らかならんと願うとともに、戦争は悲しみと絶望以外何も生み出さないことを痛感した、蒸し暑い夕暮れだった。
|