WELLA
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2003年10月27日(月) こういうところに来たかった。

夜、またも六本木ヒルズへ。
大学院の先輩である年下の男性ヤスと久しぶりに会う約束をしたのだが、彼は配偶者が最近、夫を置いて青山・表参道あたりで女友達と遊びまわっているので、対抗して自分もホットな場所に行きたいというリクエストがあった。それに応えて自ら配偶者を置いて付き合ってしまう私も私である。
六本木駅付近で落ち合ってから、敷地内へ。しばらく外側からタワーを眺めながら「ばかだよねー」を連発する。タワーの北西部に某放送局が入っているフロアがあり、その壁面を使って巨大なグラフィカルイコライザーを表現している。なんでもある時間帯は放送と連動しているらしく、その夜もぴらぴら動いていた。こんなのが夜空に浮かんでうれしいか。
敷地内に入ると、相変わらずすごい人である。とりあえず展望台に行くか、ということでこの前と同じルートで上まで。前回は「展望室つき美術館」券を買ったが、今回は「美術館つきの展望室」券を購入。さっさと展望室へ。うーん。すばらし。昼間とはまた違った趣がある。夜に煌めく足元の都会に浮かび上がる漆黒の部分は意外と多い。御苑、墓場、高級住宅街といったところか。その対比で新宿歌舞伎町辺りは、町全体が巨大なネオンサインのようである。地方出身者であるヤスを相手に1時間ほど360度ぐるりと説明する。なにしろ同じ景色を昼間見ているので暗闇の部分も説明できてしまう。まさに高いところが好きななんとかである。
回り終えたところで、一応美術館へ。こちらはどんどんすっとぱして、めぼしいものだけを見る。クローンではないかとの疑いがあるスタッフ達が相変わらず「お気を付けくださいー」「こちらから入場となりマース」と声を張り上げている。この展示会ではめったにお目にかかれないような春画も展示されているのだが、ここはブースになっていて入り口には「性描写がありますのでお子様には云々」という表示が貼ってある。にもかかわらず入ろうとすると入り口をさえぎるように脇にいるスタッフが手を伸ばし、「こちらご了承ください」とかなんとか言ってくる。夜の時間帯に大人が入ろうとしているのに、なんと無粋な。この人達は各自決められたせりふを言った数に応じて賃金が支払われるシステムなのか?
途中に青りんごのかじりかけが置いてある。オノヨーコの作品らしい。「これ、ほんとにオノヨーコがかじったんですか?」と脇にいる警備員に聞いている人もいる。だったらどうした、という感じである。数々の展示を流し、若冲にたどり着く。この間は色彩に圧倒されて目に付かなかった細部の動物達の表情なども見る。目がくりくりしていてなんともかわいらしい。いくつか目に留まったものをそれなりに鑑賞し、なんとか最後まで行き着き、ミュージアムショップを見る。
時間は9時を回っていてこれから食事といっても、そろそろヒルズ自体の活気がなくなってきた。敷地内のレストランは気が進まないので、芋洗坂下までいったん出る。そこから六本木方面に歩き出すが、どうもぴんと来る店がない。和食でしっぽり、と思うが「およびでない」というような敷居の高い店とか、なんとなくわさわさしていそうな店とかあり、どれもなーと思いながら歩いていくと、「魚屋さんがやっている居酒屋」というのが目に付く。ガラガラとガラスの引き戸を開けて入る向こうには、壁中にべたべたとメニューが貼ってある。別にそれが飲みたいわけではないが「ホッピーとかありそう!」とか盛り上がりながら入る。果たして中は場末の飲み屋。まあ、ロッポンギにだってサラリーマンのおとーさんはいるわけだ。とりあえず生ビールを頼んで、突き出しは青梗菜にマヨネーズ風味の不思議においしいドレッシングが載ったもの。壁に貼ってあるのは「タコのから揚げ」とか「白菜と豚の蒸し焼き」とか、見たまんまわかりやすいメニューの数々。なんつーか、大満足である。「おれぁはよー、こういう店に来たかったんだよぉ〜」とか言いながら気分はすっかり小さな幸せをかみ締めるオヤジである。ビールを飲んでしまったあとは、大関を熱燗で一合だけ。熱燗なんて久しぶりである。そういえば日本酒なんて最近、きどって香りの高い冷酒とか、そんなんばっかりだったよなぁ。またまた「おれぁは、こういうのが飲みたかったんだよ」とオヤジに変身しながら飲む。飲み屋のおばちゃんも気取らず愛想がいいし、なんか北陸で私もたまに行っていたヤス御用達の大衆割烹を思い出すのである。うむー。大満足。
外に出るとそこはロッポンギ。華やぐ人々を掻き分け掻き分け、地下鉄の駅へ向かう。


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