WELLA
DiaryINDEXpastwill


2003年10月19日(日) ロクロク幸福になれず

朝9時に家を出て、六本木ヒルズへ。
森美術館開館記念展http://www.mori.art.museum/index02.htmlを見に行く。六本木ヒルズは仕事帰りに車に便乗するときに脇を通る他は、数ヶ月前に一度物見遊山に行ったきりどうも足が向かない。地下鉄を降りて早足でタワー最上階の美術館へ向かう。こんな時間なのに団体や個人の観光客がいる。展望台への行列を尻目に美術館への通路をすすむが、結局チケット売り場もエレベータも同じなのであった。美術館と展望台はセットになってるらしく、人々が混沌と動いている。

展示のテーマはアートに見る幸福の鍵。いくつかのテーマに分けて展示されている。人類古来夢に見る幸せといえば、働かずに食えることである。初めのうちは、人々が酒を飲んで歌い踊り、寝そべってそれを眺める、というモチーフの作品が続く。やがて文明が進んで労働が合理化されてくると、ただ働かず食えるだけでは飽き足らなくなる。積極的に様々な余暇を楽しむようになり、それと対応するかのように様々な欲望が顕在化してくる。そして最後にはそれぞれと折り合いをつけて心の中に平穏をもたらしましょう、というようなことを言いたいらしい。
初めのうちこそ興味深く見ていたが会場は広大で、難しいことではなくただ美しいと思うものを見たいのに、頭でっかちなテーマや着地点が見えない現代美術や映像にも飽きてくる。時折窓があるところがあり、眼下に広がる東京の展望に人が群がっている。が、そこでも係員が「他に展示がありますので先へ進んでください」と3分おきに大声を張り上げる。そもそもここには展望台のチケットで入れるからいる人達もいて、必ずしもすべての人がこれらの作品をありがたく理解しているわけではないと思うのだが、気分転換をする自由も与えられないのか。っていうか、地上50階超のタワー最上部に外を見せない美術館を作る意味ってなんだ?

だんだん不機嫌になる中、若冲をまだ見ていないことに気付いた。見逃したかと思って歩いていると、目の前に極彩色の一双の屏風が現れる。おおっ!思って近づくと、これが若冲「鳥獣花木図屏風」だった。タイル張りのモザイクを思わせるような升目を地に、それぞれの屏風に鳥たちと獣たちとが生き生きと色鮮やかに描かれ、周囲には瑞雲たなびき花が咲き乱れている。縁取りの模様はなんとなくイスラムっぽい。色のついた若冲の絵を生で見るのは多分初めて。夫もこういう絵は好きなので、二人でためつすがめつ見る。画面の中央にでんと構えた象の表情がかわいらしい。
その後、それなりに鑑賞して、ミュージアムショップに行くとさっきの「鳥獣花木図屏風」の塗り絵セット(図案は升目になっていて、色鉛筆がついている)があったので、迷わず買う。夫は順当に絵葉書を1対購入。

美術館を出て、展望室へ。たしかにこの展望はすばらしい。なんとかと煙は高いところが好き、というが私もご多分にもれず高いところが大好きなので、興奮して見て回る。遠景は特に目新しいことはないが、足元の六本木広尾界隈の、普段うかがい知ることのできない高級住宅街の様子を真上から覗けるというのは面白い。かと思えばすぐ近くに巨大なヘリポートがあったり(米軍赤坂プレスセンター)、米大使館宿舎がそびえたっていたり、なかなか考えさせられる風景でもある。ぽっかり空いている広大な防衛庁跡地もどうなるんだろう。
展望を満喫して下へ降り、敷地内の中華料理の店で食事。なんだかなぁ。決して高くなく、決して安くなく、決してまずくなく、決しておいしくない料理を、そこそこの雰囲気の中、おざなりな接客で食べる。やっぱり相対的この食事は損した気分である。この店に限らずこのビル全体がそんな感じ。建物は立派なのになぜかうそ臭い雰囲気、中途半端にマニュアル化された訓練されていないスタッフ。立ち並ぶ高級店、子供っぽいイベント。流行の店を使いこなす度量も崇拝する素養もないので、やっぱりここは居心地が悪い。
麻布十番に出て豆類を買って帰宅。


れいこな |MAILBBS