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時間のたつのは早いものである。やや中だるみかと思われた今回の旅行も、もう終わりかと思うと名残惜しい。夜中に目が覚めてしまったので、こそこそと荷造りを終わらせる。これを朝出勤するJ氏の車に託して、その車で後ほど私をピックアップして空港行きのバスが出るところまで送ってもらうことにする。朝ご飯はちょっとしんみりする。J氏と二人で朝食の支度をし、ポリッジを食べ、シリアルを食べ、四方山話をしているとJ夫人がいつものように帰宅し、いつものようにJ氏はJ夫人の朝食の準備をする。 J氏が出勤した後、J夫人にIEの使い方などを説明するが、ネットへのダイヤル接続がうまくいかず、彼女に拒否反応が現れる。IEは止めて、いつものようにメールだけチェックすることにするが、メールの受取に異常に時間がかかるので、ほとんどパニック寸前。私は、多分Cから昨日の散策の写真だろうと思って、そのままにしておくように強く主張する。受信し終わったメールボックスを見ると果たしてその通りである。過去に一度ウィルスに感染したことがあるので、彼女は異常に添付ファイルを恐れるのだが、「私は添付ファイルは絶対に開かないわ」と豪語するわりに、メーラーはOutlook Expressだしプレビューはオンになってるし、心配しているだけであまり効力はないのだった。 お昼ごはんは、前ご近所だった日本人女性と近くのホテルで待ち合わせていて、それに合わせて家を出るといったら、J夫人も散歩がてら近くまで送ってくれるというので、雨が降らないうちに家を出る。裏道を通って街の中心部までぶらぶら歩く。ガイド独り占めの贅沢な散歩である。大学図書館に行くと地図の展示をやっているというので、それも見る。それから世界一美しいといわれるClare collegeの庭を歩く。J夫人の思い出話によると、10年ほど前に今は亡き元庭師にこの庭のコンセプトを聞いたことがあるそうだ。それによるとケム川に近いほうには赤やオレンジの暖色を、川から離れるにしたがって淡い色の花を配したらしい。なるほど今でもそれに則って植えられている。時間が来たのでここでお別れ。再会を誓って彼女は家へ帰っていった。 約束の日本人女性は、時間通りにホテルのロビーで待っていてくださった。今回はなかなか日程が合わず、こんなにぎりぎりになってしまって…といいながらランチ。彼女はだんなさんが英国人なのだが、もう高齢になってしまってすっかり出不精になり、日本はもちろん近場に旅行する気にもならないらしい。彼女はまだまだ元気だが、かといって一人で旅行するわけにも行かずなかなか大変だという話を聞く。普段手紙のやりとりをしているわけでもなく、こうしてたまに会って1〜2時間おしゃべりをするだけなのだが、特に今回は会話が弾んだ気がする。利害関係がない私と日本語で話して少し気が晴れたのならいいなと思う。 J氏がピックアップに来てくれて、彼女とも挨拶を交わし車に乗り込む。街中は一方通行で回り道をしなくてはならない上に、週末で交通量が多く、やっとバス停までたどり着いたのは出発時間5分前だった。バスはもう到着していて、荷物を降ろして別れの抱擁をする。ほっぺたにちゅっちゅとして、唇にも(!)。年配の英国人は、友達や兄妹でも本当に親密な間柄を表現する場合は唇にキスするのは目撃したことがあるのだが、なるほどこれか!と思う。知らないとすごくびっくりすると思う(知っててもびっくりしたし)。バスに荷物を預けて気づいたが、実は出発時間を10分遅く覚えていたので、あやうく乗り遅れるところだったのだ。さっき車で通ってきた道をまた苦労して逆行し、郊外のPark&Rideを通って高速に乗る。去年もそう思ったのだったが、はじめからPark&Rideに送ってもらえばもっとラクだった。バスが順調に走りだしたところで寝入ってしまう。 しばらくして目が覚めると、大渋滞にはまっていた。いったいどこなんだろう?ときょろきょろしているとやがて次の停車ポイントである郊外の空港に向かっていた。何人かが降り、何人か乗ってくる。バスは断続的に走り、徐々にヒースローに近づくが、そこまでもう一度停車ポイントがある。これはケンブリッジの人が「何であんなところに止まるの?ばっかみたい!」と言っているところで、確かになんのためにそのロンドン郊外のその街に止まるのかよくわからない。一ついえるのは停車ポイントが増えるとその分街中を通る時間が長くなり、渋滞に巻き込まれる可能性も高まるということである。そのばっかみたい!な停留所からは老婦人が一人のり、いよいよ一路ヒースローへ向かう。が、なかなか手ごわい渋滞である。ほとんど止まっている時間すら出てきた。大体2時間半の道のりでうまくすれば2時間でつくのだが、渋滞を見越して1本早い便(旅程3時間)を見てこれである。結局ケンブリッジからヒースローまで3時間半かかかり、ついた時には出発時間1時間半前になっていた。まさか乗れないということはないのだが、出発前に免税の手続きもしなくてはならずあまり余裕はない。 チェックインを済ませて免税カウンターにいくと、すごい行列である。並んでいるのは、チャドル姿の女性とか、金ぴかの指輪をしたインド人とか、台湾・韓国あたりの家族づれとか、スーツケースをカートに山積みにしたスーツケースと束になった免税書類を携えてずらーっと並んでいるのである。税関の職員は4人。事前チェックのおにいさんが一人ついていて誘導しているのだが、全然はかどらない。私の免税書類はたった1枚、返還額は数千円である。30分ほど並んでやっと列の半分まで来たが、あと30分で登場開始時刻である。じりじりと待っているとやっと手続きを終えた日本人の若い女性二人組みが「あー、間に合わないかと思った」といいながら笑顔で出て行く。うらやましい。 数千円のために飛行機に乗れなくなってはしゃれにならないので、結局、タイムアウト。搭乗口までは10分〜20分かかるというし、免税店で買い物をする気力もなく、まっすぐに搭乗口まで向かう。当然時間があまりまくりなので、J夫妻に電話してみる。1ポンド硬貨しかなく、通話時間が余ったので、NEXT CALLボタンを押して次々に電話して何人かに別れを告げる。 搭乗したのはほぼ最後。私の席は早めに確保したすっちー待機席の正面通路際。別にすっちーとお友達になりたいわけではなく、ここだと前の座席がなくてラクチンだからだ。席に向かうと3人がけのうち真ん中に足を伸ばして座る、ちょっとあんちゃん風のダブルのスーツにノータイ黒いシャツの若い男性。メガネはやや色つき。窓際の席も空いているのに頑として動かないつもりらしい。上の荷物棚を開けるとすでに荷物がぎっしり。一人分でこんなに埋まるのか、と思う。ずいぶん神経質な人らしくスーツのしわを気にしたりしている。私が無造作に機内用のスリッパを取り出して履くと、彼も思い出したらしく上の棚から真新しいスリッパを出してきた。そして真新しい耳栓をして、出発が近づくと薬用石鹸ミュ○ズのウェットティッシュで念入りに体を拭いている。ひー。食事のサービスが始まると落ちつかなげに立て続けにビールを飲む。隣の空席のテーブルも引き出し、つぎつぎと使い終わったりからになった食器をきちんと並べていく。ひー。食事が終わると歯を磨きに席を立ち、戻ってくると薬を飲んで寝る体制に入った。睡眠薬か?旅慣れてるんだか慣れてないんだかよくわからない人である。隣の人のことは極力考えないことにしよう。 機内アナウンス。私の席からは見えないが、窓から大接近中の金星が見えるらしい。
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