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なぜか今日はみんな忙しいらしい。ロンドンにいってたり、親戚が訪ねてきてたり。お世話になっているJ夫人も今日は午後から仕事だという。一人でぶらぶらするのも悪くないので、ケンブリッジ郊外の小さい街にバスで行って見ようと思っていると、J氏が午後から付き合ってくれるという。その前に彼の勤務先のコレッジのランチに行くプランを提案してくれたので、ありがたくお申し出をうけることにする。ケンブリッジ大学のコレッジでは(もちろんコレッジにもよるのだろうが)食事の時間は構成員が一同に介して、意見交換をしたり消息を聞いたりする大事な交流の場であるようだ。「彼は序くじの時間になればコレッジに戻ってくる」とか「最近食事の時間に見かけないけど…」などという会話が日常的に交わされている。 午前中に中心街をうろついて、約束の時間にJ氏のコレッジを訪ねる。受付の女性に話を通していてくれたので、名前を告げるとすぐに取り次いでくれ、受付で世間話をしながら待っているとJ氏が現れた。食事の前にちょっと敷地内を散策する。ここはいくつかあるコレッジの中でも比較的新しく、他の伝統あるコレッジに比べると圧倒的に保有する土地が少ないので、コレッジ間で土地の売買をしたり、地元住民の土地・建物を寄贈してもらったりして、現在土地取得に動いている最中である。コレッジ間で土地を売買するときは、一つの大学の元にある組織にも関わらず市値なのだという。独立採算制である。 それからいよいよ食事の時間。ここは一度でも構成員になるといつでも戻ってこられるという非常に家庭的なところである。初対面でもお互いに紹介しあって食前酒を楽しんでいる集団がいて、そのうちの一人が私たちの前を通りすぎるとき、話かけてきた。非常に高名な学者らしい。静かな話し振り、浮世離れしている。私にスープをよそってくれたり、いろいろ話しかけてくれるのだが、一言も聞き取れない。それでも顔の表情を見て「ふーん、ふん」とか相手の笑顔に合わせて笑ったりする。ランチに来ている人達もみんな浮世離れしている。これに比べると日本の大学はかなり浮世に近い。 隣の街に行く時間が心配なのと、これ以上聞き取れない会話の中にいるのもなんなので、食後のコーヒーはパスさせてもらう。車で隣街St.Ivesへ。クロムウェルに縁のある川が流れる美しい小さな街である。駐車場が1時間しか止められないので、1時間以内に観光。帰りに英会話の個人レッスンを受けていた先生のところへ寄ってもらう。夫も同じ先生についていたのだが、すっかりあの当時の発音を失ってしまったので敵前逃亡してしまった。ケンブリッジは大学関係者が散らばって住む狭い街で、J夫妻とも古くからの知り合いなので、そのままJ氏ともどもお茶を出してもらっておしゃべり。先生から不慮の事故死の話を立て続けに2つ聞く。さすがに描写がわかりやすく的確なので、くっきりその場の状況が目に浮かんでしまう。 予想外にいろいろと体験できた1日だった。夜、浴衣を着る。今度は帯の裏を使って白。帯の結び方とか、浴衣の特徴とか説明する。とても喜んでもらう。しばらくするとアメリカにいるJ夫妻の息子さんから電話がかかってきた。ロンドンで大規模な停電があったので、誰か動きが取れなくなっているのでは?と安否を気遣ってきたのだ。 J夫人が「なんで私達が知らないのに、アメリカから電話が来るかしらねぇ」といいながらテレビをつけると、地下鉄が全部止まっているらしい。「人々は雨の中なすすべもなく彷徨っています」というコメントとともに、そのままの映像が流れてきた。うわー、大変。
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